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ATLIA STAFF BLOG
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去る10月24日(日)、秋の企画展〈川口の匠vol.5信頼をつなぐ〉に関連して、やさしい鑑賞講座[トークセッションPart.1 ともに歩む川口の木型と鋳物]を開催しました。
出演いただいたのは、本展の出品者である井上芳久さん、鋳物師の永瀬勇さん、そして科学技術ジャーナリストの赤池学さん。木型・鋳物とは何かという基本的なところから世界をリードする技術まで、出演者それぞれの専門分野から解説いただいたのち、これからの展望を話し合っていただきました。

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前半は一人ずつスライドを用いてプレゼンテーションを行います。トップバッターの赤池さんは、ご自身が研究しているユニバーサルデザインの視点から木型・鋳物の重要性を説きました。日本から世界へ広がったヒット商品として、センサー付きの家電やロボットなど日本から世界へ広がったヒット商品を紹介。新しいものをつくるにはパーツの部分から新しい発想を組み込まなければならず、様々な鋳造と木型づくりの技術がそれを形にしていると言います。
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これからのものづくりには人の「感性」に訴える力や「公益性」が求められると赤池さんは考察しています。使いやすさを考えて次の手に渡す木型や鋳物も、他者を思いやる愛情と結びついていると語りました。
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永瀬さんのお話は、川口の鋳物の歴史とご自身の手掛ける仕事について。東京オリンピックの聖火台が川口でつくられたことはよく知られていますが、技術は大きく発展し、永瀬さんの工場では電子部品やその製造装置を手掛けているそうです。部品自体はアジア諸国でつくられているけれど、基となる製造装置を鋳造できるのは日本だけ。
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精度の高い鋳物をつくるには優れた木型が必要です。高度な条件を満たす木型屋があって初めて他国の追随を許さない鋳造品を生み出すことができると永瀬さんは強調しました。

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出品者の井上さんは、経営者としての広い知見から日本全国または海外と比較しての川口の木型業の特徴を語りました。減少傾向にあるものの、川口市では百数十軒もの木型屋が操業しています。一方海外は大手メーカーの一部門に組み込まれているところが多いとのこと。川口は関連産業の鋳物や機械加工の工場も含めて世界でも例がないほど集積度が高いそうです。
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優れた技術をもつ鋳物屋と連携して、井上さんは自動車メーカーの試作部品を手掛けています。提携先との相談や資材の調達も即時にできる川口の奇跡的ともいえる環境をもっと強みとして意識していく必要があると語りました。


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休憩を挟んでトークは後半へ。三者で川口の木型と鋳物・ものづくりのこれからについて話し合います。永瀬さんからは現場で中核を担う技術者の採用難が問題点として挙げられました。コンピュータを多用するようになっても重要な判断を行うのは人であり、ものづくりへのこだわりや勘を持つ人間が品質を決めると言います。 
その論に井上さんも共感を示しました。若手社員全員に手仕事の基本的な技能を身につけさせていますが、目標となる国家試験の廃止や就労時間の減少などが懸念されると言います。市内の仲間と連携し、異なる業種や役所など様々な人を巻き込みながら創意工夫することが今後ますます大事だと次の世代へのエールを送りました。  
二人の話を受けて赤池さんは、コンピュータや機械では再現できないものづくりの本質について語りました。人に備わる多様な経験から創造力が生まれるのであり、テクノロジー以上に製品が生み出されるまでのプロセスやつくり手の人間的なエピソードを発信していくことが大切であると締め括りました。


今回の講座を通じて、日本のものづくりにおける川口の街と、技術とともに受け継がれた感性の重要さが改めて浮き彫りになりました。休憩時間と閉幕後には出演者に熱心に質問し、歓談する参加者の姿が見られました。現代の暮らしの中では見えにくくなっている地場産業を見直し、「キューポラのある街」以来の固定したイメージを新たにする機会となったのではないでしょうか。
by atlia | 2015-10-29 07:29 | 鑑賞講座・実技講座
川口市内の小中学校に第一線で活躍するアーティストやデザイナーを派遣し、特別な授業を行う長期プログラム[アーティスト・イン・スクール]。
第10回目の今年度は[ぼくらはひかりを変えられる]と題し、現代美術家の出田 郷さんと里小学校5年生の123名が活動中!
今回は第一回目の授業「ひかりと色の実験」の様子をレポートします。

いよいよ授業が始まる、というときに突然教室が真っ暗に。
児童たちはびっくり!驚きを隠せません。
しかし暗いなかにすっと一筋のひかりが現れると児童たちはなんだなんだと目で追っていきます。
するとそのひかりにぼんやりと男性の顔が照らされ、幽霊のような浮かび上がり方に笑い声もひろがります。
印象的な登場をしたのは今回の講師、現代美術家の出田 郷さんです。
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今回は「ひかりをテーマにみなさんと一緒に授業をしたい」と自己紹介をした出田さん。印象的な登場にも納得です。
「ひかりってどんなものだろう?」さっそく児童に問いかけます。改めてと聞かれると…うーん、ちょっと難しい。
「ひかるものってどんなものがある?」と聞かれると手が挙がり、「電気!」「信号」「海とか水?」など様々な答えがでてきます。
では、それらはどのようにひかっているのでしょう?
その実体は「ひかりを発するもの」と「ひかりを反射する(なにかのひかりを受けている) もの」。
緊張気味だった児童たちも出田さんのお話にどんどん引き込まれていきます。
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ひかりは感じられるけれど触れられないもの。
どんなものか聞かれても実感のわきづらい様子の児童たち。
出田さんは児童たちに実験をしようと持ちかけます。
「ひかりがどう進むのか見てみたい?」「見たい!」という大きな返事を聞いて出田さんが取り出したのはスモークマシン。
教室をスモークで満たし、懐中電灯を点けると…まっすぐな筋の様なひかりが!
ひかりが「進む」様子を見て教室中から歓声が上がりました。
手をのばすとひかりに触れた心地。
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「このひかりを曲げるにはどうしたらいいと思う?」
児童から「鏡で反射させる!」「水を使う!」というアイデアが出て、ひとつずつ試していきます。
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ひかりが姿を現わしてから、児童からアイデアがたくさん上がり始めます。
なんだか積極的になってきたかも?次第に気持ちも高まってきました!

出田さんは三角形のプリズムを手に取りひかりにかざします。
すると天井と床には虹が!
今まで「ひかり」だったものの中に突然「色」が出現。
どこから色がやってきたのでしょうか?
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「ひかりの中には色があるようだね。じゃあもとから色のついたひかりを混ぜるとどうなるだろう?」
出田さんは赤・緑・青のライトを用意。
青と赤ではピンク色に近く、緑と赤では黄色に近く…では3色合わせるとどうなるでしょうか?
全てのスイッチをonにするとひかりは白に近い色になりました。
しかし影を見てみると、どうでしょう?
いつもは暗い影が、赤・緑・青などカラフルな影になりました!しかもひとつだけではないようです。
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様々な色のひかりのなかで自分の服を見てみたり、色紙を観察したり、色の変化も楽しみました。

授業の最後には今日の授業で扱ったひかりの進み方や隠れた色をつかって制作した出田さんの作品を鑑賞。
児童もそれぞれの体験に重ね合わせている様子。
時折「おーっ!」「すごい!」という声も聞こえました。
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ひかりの進み方、曲がり方、そして隠れた色について実験を通して学んだ児童たち。
このひかりは制作の重要なポイントになっていきますが、この理科のようなこれらの実験が今後の作品づくりにどう関わっていくのかはっきり明言はしていません。
実は出田さん、それを児童たちに秘密にしているのです。
次回はどんな授業になるでしょうか?

このブログでは、今後も授業の様子を随時お伝えしてまいります!
関連する記事はこちら
第10回アーティスト・イン・スクールNo.1 授業が始まりました!
今後の展開をお楽しみに。
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by atlia | 2015-10-24 16:39 | 学校×アトリア
10月18日(日)、開催中の企画展〈川口の匠vol.5 信頼をつなぐ〉に関連したワークショップ、[楽しみを型どろう!]を開催しました。木型をつくる匠の仕事を一部体験。木材を好きな形に彫って原型をつくり、シリコンで型どります。
講師は60年以上の経験を持つ木型職人、川上豊さん。普段から公民館などで、小中学生に木を使ったものづくりの楽しさを伝えています。

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活動に入る前にたくさんの木の種類を教わりました。川上さん自慢のコレクションは100以上!木の性質について知り尽くしています。 今回材料とするのは木型づくりに最も多く使われているヒメコマツ。木目が細かいけれども柔らかく、加工に適しているのです。

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材料の大きさに合わせて下絵を描きます。とにかく正確さが求められる木型づくりは最初が肝心。小さく尖ったところや細い部分をつくらないことが後の作業で失敗しないコツです。川上さんのアドバイスを受けながら慎重に絵を直していく参加者たち。それぞれの個性がありつつ、型に適した形に整っていきました。

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電動糸のこぎりで絵の輪郭を切り抜きます。小学6年生はさすがの手つき。
側面のがたつきをノミで整えた後、模様などの細かなところを彫刻刀で彫っていきました。角や表面を滑らかにすることも重要。紙やすりで整え、ラッカーでコーティングしたら木型の完成です。

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木型をシリコンで型どりします。気泡が入らないよう側面を先に覆い、小さく切ったガーゼを張り付けて補強していきます。木型の凹んだ部分には入念に押し込み隙間をつくらないように。なかなか根気の要る作業です。

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シリコンの硬化を待つ間、みなで展覧会を見にいきました。川上さんの解説を聞きながら、プロの仕事に興味津々の参加者たち。自分の手でつくった実感から、作品のすごさ・面白さが見えてくるようです。

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そしていよいよ型抜きです。木型から少しずつはがして、うまく抜けるでしょうか・・・

結果は全員大成功!!丁寧に作業を積み重ねた甲斐がありました。さっそく石膏を注いで、複製も試してみます。

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石膏の硬化を待つ間、川上さんが特別な体験を用意してくれました。クギ打ち名人を目指しての練習と初めてのカンナ掛け。お手本を見せる川上さんのあざやかな手つきに参加者からため息が漏れます。

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二度目の型抜きもうまくいきました。作業工程の多いワークショップでしたが、参加者たちの集中力抜群!じっくり手を動かしてものづくりを楽しむ充実した時間となりました。
型を使えばオリジナルの形をいくつでも増やせます。石鹸やろうそく、はてまたバレンタインのチョコレート?次は何で型どりしようか、楽しみが広がりますね。

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by atlia | 2015-10-23 10:00 | ワークショップ
すっかり秋になり、空も高く感じるようになってきました。
秋といえば、毎年開催している[アーティスト・イン・スクール]の季節です!

川口市内の小中学校の図工・美術の時間に、第一線で活躍するアーティストやデザイナーを派遣し特別な授業を行う「アーティスト・イン・スクール」。
2006年の開館以来、児童・生徒が講師と共に活動する中で創造力・想像力・コミュニケーション力を育むことを目的に実施、アトリアスタッフがコーディネーターを務めています。
第10回目の今回は[ぼくらはひかりを変えられる]と題し、10月からの1か月半の間に、
市立里小学校の5年生と現代美術家・出田 郷がひかりと色を反射させる作品を制作します。
身近にあるけれども存在が捉えがたいひかり。様々な実験を通してひかりや色の性質を知り、「見ること」について考えを深めます。
また作品はひかりや色を反射させるだけでなく、お客様に動かしてもらう仕組みを考えます。
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このブログでは、授業の経過や授業の様子をご紹介。
なかなか見られない学校での児童の姿もお伝えしていきます。
教室の空間ごと変化させてしまうアーティストと、初めての経験にどきどきの児童や先生方。
アーティストと学校が出会ってどんな発想や作品がうまれるのでしょうか?
なにが起こるか想像できない時間にコーディネートするアトリアスタッフもわくわくしています!
今後の更新をお楽しみに。

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by atlia | 2015-10-16 10:53 | 学校×アトリア
本日10月10日(土)より、秋の企画展〈川口の匠vol.5 信頼をつなぐ〉がオープンしました。

川口に製作の拠点を構え活動している匠たちに着目する展覧会シリーズ。第5回目となる本展では、ものづくりに欠くことのできない「信頼」をつないで木型を製作する4人の匠を紹介しています。

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新しくつくられる製品の原型となる木型。その製法は昔ながらの手仕事からコンピュータを駆使したハイテクなものまで様々ですが、常に新しいものを設計・実現する匠の高度な知恵とひたむきな熱意は共通しています。
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製作の過程には、提携する相手と学び合い試行錯誤してきた日々の積み重ねがあります。その一部を展示紹介することで、ものづくりの原点にある目に見えない価値を伝えます。

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展示室には精度を極めた木型のほか、それをつくる材料や匠愛用の道具なども並んでいます。
一方スタジオには専門の材料や道具を使って、木型や鋳物をつくる匠の仕事を模した体験ができるコーナーを設けました。小さなお子さんや大人の方にも楽しんでいただいています。

会期中には型の工場を訪ねるアートさんぽ、当日受付のトークイベントなどを開催。アトリアHPで詳細を紹介しています。
http://atlia.jp/exhibition/

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〈川口の匠vol.5 信頼をつなぐ〉
[出品者] 池田由喜夫(池田木型製作所)、井上芳久(株式会社 イノウエ)
       大森一弘(有限会社 大森木型)、宇波岳雄(株式会社 田口型範)
[会 期] 2015年10月10日(土)~11月15日(日)
[開館時間] 10:00~18:00(土曜日は20:00まで開館、入館は閉館の30分前まで)
[休館日] 月曜日(11月12日(月祝)は開館、13日(火)は休館)
[観覧料] 無料
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私たちの暮らしを縁の下から支える、知られざる木型の世界にぜひ!
たくさんのみなさまのご来場をお待ちしております。
by atlia | 2015-10-10 16:49 | 企画展
10月18日(日)に開催するワークショップの参加者を追加で募集しています。
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[楽しみを型どろう!]
熟練の木型職人のナビゲートのもと、木材を好きな形に彫って原型をつくり、シリコンで型どります。木のぬくもりを感じながら、うまく型が抜けるようにするための技術など匠の仕事を追体験。石鹸やろうそくづくりなどで使えるオリジナルのシリコン型を持ち帰ります。

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汚れても良い服装のほかは手ぶらで参加OK!難しいところはスタッフが丁寧にサポートします。ものづくりを身近に楽しみながら、川口のまちについてちょっと詳しくなれる体験をしてみませんか。



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秋の企画展〈川口の匠vol.5 信頼をつなぐ〉関連ワークショップ
[楽しみを型どろう!]
日時:10月18日(日)13:30~16:30
対象:小学生4~6年生 12名
参加費:500円
講師:川上 豊(埼玉県技能士会)
応募締切:10月16日(金)まで。開館時間にお電話にてお問合わせください。
TEL:048-253-0222

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※木型とは
製品のかたちの検討や機能の確認のためにつくられる原型。現在は多くの場合、プラスチック等を素材に機械加工されていますが、古くは専ら木を使ってノミやカンナでつくられていました。その手仕事を受け継ぎ、機械部品や身近な暮らしの道具の型をつくっている職人が川口にはたくさんいます。

※講師について
川上豊さんは鋳物をつくるための木型を60年以上つくり続けているベテラン。市内公民館で「夏休み子ども工作教室」を行うなど、たくさんの小学生や中学生に、木を使ったものづくりの楽しさを伝えています。

たくさんのみなさまのご応募、お待ちしております。
by atlia | 2015-10-02 09:44 | ワークショップ