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ATLIA STAFF BLOG
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4月5日(土)には、春の企画展〈フィールド・リフレクション〉関連イベントとして「アーティストトーク 伴美里」を実施しました。
伴さんは日々の生活の中で出会った人・自然・ものなどから感受するエネルギーを制作の糧としてきた画家です。
今回のトークでは、これまで様々なジャンルで活躍する方々に働き方や生き方について数多くインタビューされてきた西村佳哲さんをゲストにお招きし、伴さんのアーティストとしての姿勢や自身の「フィールド」への向き合い方などを深く掘り下げて伺っていきました。
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前半は伴さんがこれまで国内外を問わず生活してきた場所において、強く心を捉えたものとの出会いを写真を投影しながらお話し頂きました。

まず近年の作品制作に共通して意識してきたという、2010年にニューヨークで出会ったアメリカの先住民族であるホピ族の暮らしや教えについて言及。
ホピ族には”自給自足もしくは誘惑”という格言があり、大地から得たもので自分の暮らしを手作りしていくことの大切さを説いている、と伴さん。また”7世代先のことを考えて行動するべし”という教えもあり、途絶えることなく繋いできた人や様々な生命の循環について、深く思いを馳せるようになったといいます。
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こうしたホピ族の教えを受けて自身について振り返った際、白山市の生家は何世代も前から同じ場所に居を構え白山という土地を大切にしてきたことや、庭の畑で家族が食べるだけの食糧を育てながら命を繋いできたことを知り、その尊さを深く認識したことを語りました。
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また、伴さんの作品の大きな特徴の一つであるカンバスの形についても触れ、2007年頃から四角いカンバスではなく自身の想いを投影するように人間の視野に近い形の楕円形のカンバスを使うようになり、さらに現在は心を捉えたものそのものの形をカンバスにしていると語りました。
本展の展示作品でもある《under the tree》(2011年)では、白山市の実家のすぐそばにある農林試験場で出会った古い切り株の形に忠実であることを写真を用いて解説。地面に落ち葉が重なり養分を地面へ蓄え水脈を生み出し命の循環をもたらしている様子を目の当たりにし、「生きているだけでいいんだ」と知ることができたその瞬間の足元の様子を描いたとの説明に、皆聞き入っていました。
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さらに、今回アトリアでの展示に合せて川口市内を取材し、「植木」や「盆栽」にまつわる人間と植物との関わりの奥深さについても語って下さいました。
特に植木職人であり「はしど」14代目の尾林弘一さんの仕事については、「ホピ族の教え7世代よりも倍の代続いている」ことに素直に驚き、植物のリズムに寄り添い何十年というスパンで仕事をしていることで世代を跨いで続いていく必然性を知った喜びが作品に反映していることを語りました。
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後半は西村さんの提案で、ラジオ番組のようにお客様に記入して頂いた伴さんへの質問カードを読み上げ、それに答えていく流れにしました。
「生計はどうやって立てているのですか?」という率直な質問や、「『生きているだけでいい』と感じられたということになぜか私もホッとした」という感想などもあり、和やかなトークとなりました。
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「森の中で小さな動物がドングリを一個一個見つけるように、自分の日常の中で大切だと感じたことを拾い集めたものが制作に繋がっている」と語る伴さん。
幼いころは誰もがしていたはずの身の回りの物事への発見の積み重ねを、ずっと大切にして生きてきた姿勢の瑞々しさと、その魅力をそのまま伝えるように軽やかで美しい色彩で表現される作品世界に、多くの方々が魅了されたトークとなりました。

ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。
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by atlia | 2014-04-29 01:47 | 企画展
H26年春の企画展〈フィールド・リフレクション〉では作品1点1点についての興味を深めていただこうと、会期中4回にわたり鑑賞プログラム「アートウォッチング」を企画しています。

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4月19日(土)は視覚に障害のある方とない方が一緒に楽しむ回。都内近郊の美術館で活動しているグループ「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の協力を得て実施しました。川口市内外から9名(付き添いの方1名を含む)の参加者が集まり、視覚障害者がナビゲートする2つのチームに分かれて展示作品を鑑賞していきました。

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まずは質問カードを1人ずつ引いて自己紹介。好きな場所、香り、時間などを答えることでお互いの人となりを知り、打ち解けた雰囲気のなか活動がスタートしました。

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3人の作家の展示コーナーそれぞれをチームで見て歩き、気になる作品をひとつ選んで会話します。参加者自身の見方や感じ方を主軸とするため、事前の解説はありません。画面の大きさ、その中に見えるものや印象などを晴眼者が伝え、視覚障害者はその言葉をもとに想像の中のイメージを組み立てていきます。「○○の部分はどうなっていますか」と不明な点を問われ、見ていたつもりで意識していなかったものに改めて気付くことも。

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本橋成一さんの写真に映し出された異国の村の暮らしに一同興味津々。
「人々の生活に常に木が寄り添っている。」
「長老のような人が根元でまじないをしている。聖なる木として大切にされているのではないか。」
と、複数の作品から共通するテーマを推理する場面もありました。

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田中みぎわさんの水墨画は
「見たことないけど知っているような、どこか懐かしい景色。」
そこから連想される個人の思い出や空想の世界などが語られ、墨の濃淡で描かれる、あたたかくしっとりとした水辺の空気を味わいました。

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不規則なフォルムをもつ伴美里さんの絵画からは
「ジグソーパズルのピースみたい。」
「完全じゃない形から広がる世界がありそう。」
「視野が地面に近くて、何でもないものが気になったり大事に拾って帰ったりした子どものころを思い出す。」
「記憶のかけらを表しているのではないか。」
といった、作品の核心に迫る会話も。互いの言葉に視点や思考がどんどん引き出され「もっと話したい!」という気分を残したまま鑑賞を終えました。


最後は振り返りの会。チームで輪になり感想を話し合いました。
「そういう見方もあるのか!と驚きながら、みんなで言葉を膨らませていくのが楽しかった。」
「展覧会のテーマの一部である”自然との関わり”についても捉え方は様々で、自分1人では辿りつけなかったゴールに向かうことができた。」
「作品を深く読み取ることができ、作家の想いに近付けた気がした。」
と、活動の充実度と満足度を伝える感想がある一方、
「次々と耳に入る情報に頭を切り替えながらついていくのに苦労した。経験が無いものは共有できず苦しい時間もあったが、人それぞれの思い出を聞くのは新鮮で、自分のアンテナに引っかかるキーワードから段々とイメージをつくることができた。」
との感想も。作品を言葉で伝える難しさとともに、”見ること”に含まれる要素の幅広さと可能性がうかがえます。

次回5月10日(土)は聴覚に障害のある方とない方が一緒に楽しむ回です。新たな参加者とともにどんな発見を得られるか乞うご期待!ご興味のある方はぜひ気軽にご応募ください。
by atlia | 2014-04-21 19:25
H26年春の企画展〈フィールド・リフレクション〉の関連イベントとして「アーティストトーク 田中みぎわ」を4月20日(日)に開催します!

大学院終了後から石垣島・屋久島・熊本・武蔵野・茅ヶ崎・南足柄など国内各地に長期滞在しながら作品を制作してきた田中みぎわさん。これまでの滞在先や日々のスケッチと作品の写真を交えながら、心を強く捉え制作に反映させてきた自然の情景やそこへ向き合うご自身の気持ちなどをじっくりとお話いただきます。
「今まで住んだ場所の風景からスケッチと絵が生まれてくる様子を、雲と空・雨・海・川・山、とモチーフ別に、スライドと一緒にお話します。みなさんにその場所へ一緒に行ったような気分になってもらえるといいな、と思っています。」とのこと!
ご期待ください。

日時:4月20日(日)14:00~ ※1時間程度を予定しています。
参加費:無料(別途企画展の観覧料が必要です)

出演:田中みぎわ(画家)1974年~
東京都武蔵野市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程日本画専攻終了。
湿気をたっぷりと含んだ自然の風景が圧倒的な生命力を持って描かれ、自身の「自然の一部でありたい」という言葉に一人の人間としての生き方を考える姿勢があります。
http://migiwalog.exblog.jp/

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▲田中みぎわ《旅人は故郷を目指す》2013年
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by atlia | 2014-04-16 14:30 | 企画展
アトリアの公募展〈第4回 新鋭作家展〉の一次審査(書類審査)を行いました。
審査員は前回に引き続き、前山裕司 氏(埼玉県近代美術館学芸員)、戸谷成雄 氏(彫刻家・武蔵野美術大学教授)、南嶌 宏 氏 (美術評論家・女子美術大学教授)の3名。

応募件数は前回を大きく上まわり、北海道から九州までの全国各地より109件が寄せられました。年齢層も20代から50代と幅広く、ギャラリーや地域のアートプロジェクトなど様々な場所で活動している作家も。
応募者それぞれがもつ創作活動への意欲と可能性、実力伯仲しそうなプランを前に、審査員も例年より更に時間をかけて熟考する様子が見られました。

そうして選ばれた一次審査通過者(入選者)は9名。
※アトリアweb内新鋭作家展のページで公表しています。

次回の二次審査はプレゼンテーション形式で行い、9名それぞれが定められたブースの中で、作品や資料等を展示します。その様子は来たる6月、〈新鋭作家展 第3回優秀者 白木麻子・大和由佳 展〉と併せて一般公開致しますので、ぜひご高覧ください。

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■ 第4回新鋭作家展 二次審査
 一次審査を通過したアーティスト9名によるプレゼンテーション形式の作品(資料)展示

■新鋭作家展 第3回優秀者 白木麻子・大和由佳 展

会期: 2014年 6月7日(土)~6月22日(日)
    10:00~18:00(土曜日は20:00まで開館) 入館は閉館の30分前まで

観覧無料

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by atlia | 2014-04-14 15:16
アトリアでは、現在も開催中の企画展をはじめ、関連イベント・ワークショップ・講座などを数多く実施しています。
アートを気軽に・身近に楽しめるイベントを中心に、私たちアトリアスタッフと一緒に活動していただくボランティアを募集しています。

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子どもたちを中心とした参加者の皆さんに寄り添って制作したり…
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裏側では開催準備の作業も。
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会場ではおそろいの赤いエプロンが目印!


ワークショップや講座では、講師となっていただくアーティスト、参加者の方々、そしてスタッフやボランティア同士など、多くの方々と交流を持ちながら活動を行います。
スタッフが企画したプログラムをお手伝いいただくだけでなく、企画構想から参加し自分のアイディアを実現できる機会も!
アート施設の裏側にちょっと触れられる、かも?

技術や経験は不問。アートに興味を持ち、多くの方との交流を楽しみながら参加していただける方を募集しています。
活動期間は1年ほど。年度ごとに募集を行い、登録・更新をしていただいています。
詳しい情報は、アトリアWEB内サポートスタッフのページからご覧ください。
お申込みはお電話・窓口で承ります。お気軽にお問合せくださいね。


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by atlia | 2014-04-09 12:31 | サポートスタッフ
H26年春の企画展〈フィールド・リフレクション〉の関連イベントとして「アーティストトーク 伴美里」を明日開催します!

日々の生活の中で出会った人や自然やものから感受するエネルギーを制作の糧としてきた伴美里さん。
長く過ごしてきた故郷の石川県白山市や現在お住まいのある東京についてはもちろん、8年間の留学先となったベルギーやロンドン、そして本展開催にあたり関係を深めたこの川口市など、瑞々しい感性で彩られた作品の背景となっている、自身にとっての「フィールド」についてお話いただきます。

トークのお相手は、本展の図録にも素敵な文章を寄せてくださった西村佳哲さんです。
お2人の楽しい掛け合いにご期待ください!

日時:4月5日(土)14:00~ ※2時間程度を予定しています。
参加費:無料(別途企画展の観覧料が必要です)

出演:伴美里(画家)1977年~
美術大学卒業後、渡欧しベルギーとロンドンの美術学校にて絵画を学ぶ。帰国後は東京と生家のある石川県白山市とを行き来し、日常を通して出会う人・自然・もの等から感じるエネルギーを自身の制作の糧としている。
http://www.misatoban.com

ゲスト:西村佳哲(リビングワールド代表、プランニング・ディレクター、働き方研究家)1964年~
建築分野を経て、ウェブサイトやミュージアム展示物、公共空間のメディアづくりなど、各種デザインプロジェクトの企画・制作ディレクションを重ねる。多摩美術大学、京都工芸繊維大学 非常勤講師。
http://www.livingworld.net/nish/lang-pref/ja/
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▲飯村靖文(盆栽師)さんや尾林弘一(植木職人)さんにお会いするなど、川口市内を取材した伴美里さん
(2013年8月)
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▲伴美里《Family Kitchen Garden》2012年
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by atlia | 2014-04-04 09:36
3月30日(日)には春の企画展関連講座として、たのしい実技講座[墨と水で描く]を実施しました。
前日のワークショップに引き続き、講師は日本画家の新恵美佐子さん。
新恵さんのはつらつとした指導のもと、既成概念に捉われることのない自由で伸び伸びとした水墨画の表現に取り組みました。
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まずはデモンストレーション。
モチーフを「面」で捉える意識を持つこと、また濃墨・薄墨・その中間の墨という3種の特徴を活かしながら描くことを教わりました。
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用意した宣紙(せんし)という紙はにじみ止めの加工がされておらず、墨の伸びやかな表情が楽しめるのが特徴。
また、固形の墨は描く直前に摺ることで、水分に導かれて煤の粒子が紙に浸透していく動きを活発にし、これが滲みを豊かな表情にしていくとのこと。
この宣紙(せんし)と摺りたての墨(今回は油煙墨(ゆえんぼく)という黒色に光沢と深味があるものを使用)によって、美しい滲みが生まれることなども詳しく解説頂きました。
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さあ、いざ実践! モチーフを見つめ、面を捉えて、濃淡を使い分けていきます。
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参加者の皆さんの表情は真剣そのもので、椅子から立ち上がって描く方も多くいらっしゃいました。
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スタッフが事前に摺っていた墨も紙も裏打ち用の糊も途中で追加となるほどで、皆さんの意欲あふれる姿に講師の新恵さんもとても喜んでいらっしゃいました。
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最後は裏打ちの加工を施し、完成した一つの作品として楽しめるようにしました。
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どの参加者の方も蟹・野菜・魚・鳥など様々なモチーフに挑戦し、何枚もの作品をダイナミックに描いていただき充実した講座となりました。
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ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
今後も様々な内容でワークショップ・講座を実施していきたいと思います。ご期待ください。
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by atlia | 2014-04-04 09:35 | 鑑賞講座・実技講座
3月29日(土)、春の企画展関連ワークショップとして[水墨画にチャレンジ!]を開催しました。
講師は新恵美佐子(日本画家)さん。習字とは異なる筆の運びや墨の使い方などを学びながら、鳥や魚などを描きます。
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参加者は10代から60代と、幅広い年齢層の12人。受付を終えた順にまずは墨摺りに取り掛かりました。かなりの手間ですが固形からきちんと摺ることで既成の墨液では得られない味わい深い滲みや濃淡が生まれるのだそう。

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墨の準備ができたら次は気持ちの準備。「うまく描こうとせずにのびのび、思いきりよく!」と水墨画初体験の心得が講師の実演とともに伝えられました。各々描きたいモチーフを選んでいざ、制作開始です。


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使う筆は、空(太筆)、如水(中筆)、面相(細筆)、の三種類。 初めはモチーフの形を探り探り、均質な細い線で輪郭を描こうとする参加者たちでしたが、「端を追うのではなく面を捉えて、内側から外に向かって膨らませるような気持ちで。」 「形ばかりではなく墨の濃淡も意識して。」との講師の呼びかけを聞くうち、手の動きが大きく滑らかになっていきました。

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描き方が分からないときは講師が個別にアドバイス。桜や小鳥、朝顔などの描き方を数人で教わる場面もありました。八大山人(17世紀中国の画家・書家・詩人)などの絵葉書をお手本に、先人からも学びます。

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ひと筆ひと筆の勢い、柔らかさ、量感などを意識するうち、描かれる鳥や魚たちが生き生きとしてきました。何度かモチーフを替えてみながら、大きな宣紙(滲みの美しい中国の紙)の余白が埋まるくらい、納得いくまで描き、一番気に入った部分を切り抜いて作品にします。

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奥深い水墨画の世界に全員が没頭。 うららかな春の日に相応しい、ゆったりとした時間が流れていきました。

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そうして生み出された作品はどれも傑作!同じモチーフも、描く人によって全く違う味になるのが興味深いところです。

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作品はひとつひとつ和紙に裏打ちされ、額装できる状態にしてから参加者の手に戻ります。思い思いに過ごした時間がこれからの生活をどのように彩るのか、楽しみですね。
by atlia | 2014-04-01 09:28