AIS15:授業レポートvol.5 「線」たちは出会う
アーティストが小中学校の図工美術で、児童生徒と一緒に活動する取り組みも15回目です。今年は安部典子さんと川口市立並木小学校6年生96人の授業。
本ブログでは、スタッフがその様子をレポートしておりますが、この記事で今年も最後の更新です。
全5回の活動のうち、5回目の授業をちらっとご覧ください。
最後の授業は、当館内の展覧会会場で行いました。
授業開始のチャイムに合わせて、児童たちは校庭に集合。ここから歩いてアトリアへむかいます。
歩いてすぐにやってこられるのも、近隣ならではのメリット。ちょっとうきうきしつつも、さすが6年生、落ち着いた様子で移動します。
安部さんはギャラリーで児童たちを待ち受けます。一緒に待機するスタッフ、なんだかそわそわ…。これまで毎週学校行っていたので、児童たちと安部さんが会うのは、少し久しぶりな気すらします。
最初は安部さんの作品の展示ゾーンへ。
授業で見た作品ももちろんですが、今回の展覧会ではじめて公開された新作、児童たちと同じ材料でつくったものなども見学。
安部さんはそれぞれの作品について、丁寧にお話ししました。普段は見られない部分までちらっと見せたりして、大サービス!(いつもなら、さわっちゃダメ、と言うところですが)
児童たちにずーっと教えているようで、実は安部さんも児童たちの取り組みから刺激を受けているのです。
続いて、児童たちの作品の展示ゾーンへ。
隣の部屋に進むと、1.2回目の授業で制作したノートが一面に貼られている壁が!おおっと声をあげる児童もいれば、さっそく自分や友達の作品を探す児童もいます。
今まではクラスごとに授業をすすめてきたので、他のクラスの児童がつくったものをみるのははじめて。それぞれ個性的な作品の様子を見比べてみます。
安部さんは、「これはみんな『線』だけで制作しているけど、うまいとか下手とか、なんか優劣みたいのがあると思う?」と投げかけました。児童たちは耳を傾けつつ、ちょっと小さな声で「ない」と答えます。
これが重要だと安部さんは言いました。「線を引く・切る」は誰にでもできることだけれど、だからこそ全員の個性がちがって、まったく違う作品ができる。それぞれの個性に、良いも悪いも、無い。
ぐっと壁から引いて眺めると、確かに、ひとつとして同じ作品はありません。全員のものをずらっと並べて眺めるからこそ、よくわかるのかもしれませんね。
安部さんと児童たちは、最後に、3.4回目で制作した、プラダンの作品が飾られている場所へ出ました。
これまでの展示エリアとは違って、外へとひろがっていくような開放的な空間。自然と児童たちも自由に鑑賞しはじめます。
ここで安部さんは、自分がアーティストとして、児童たちの作品をより良く見せる方法をよく考えたと言います。安部さんにとって、児童たちの作品は、妖精のように軽やかで、自由な姿に見えるとのこと。それらがふわふわと、いろいろな高さで展示されることで、それぞれの姿が羽ばたいているようにも見えます。
児童たちが空間を歩きながら鑑賞していくと、作品の揺れ・動きも少し大きくなって、まるでついてくるみたい。
自分の作品について改めて思うこと、安部さんや友達の作品で良いと感じたポイントなど、鑑賞や制作で盛りだくさんだった、これまでの授業をふり返りました。
安部さんは、最後に、少しずつ作品へのコメントを行いました。本当は全員の作品についてお話ししたかった安部さんですが、限られた時間ではなかなか伝えきれない…特徴的な作品をいくつかピックアップしてお話しします。
ノートの作品と同じく、それぞれの「線」が明確な個性をもっているとお話しした安部さんは、それが生まれるタイミングも重要だと言いました。今回の作品は、6年生の今だからこそできる、と言うのです。「みなさんは、これからきっと大きくなって、外見(大きさ)もこの状態は今しかない。この作品はそれをそのまま反映してます。そこに、まるで内臓みたいに、複雑な気持ちやそれぞれの性格が現れているよね」
一緒に見学にきてくれた先生方からも、パッと見て、これは○○さんの、あっちは△△さんの、と、作者がすぐにわかる作品がたくさんあったと話してくれました。作品は作者の分身…この「線」による作品たちは、その特徴が顕著に表れているのでしょう。展覧会は「線たち」が一堂に会した状態と言えます。
96人の「今」も、一期一会。安部さんとの出会いも、そう。そして、ここにきてくれるお客様も、その一期一会の機会に立ち会っていただくことになります。
見知らぬ人が作品・取り組みに関心をもってくれ、反応を返してくれるなんてめったにないことかもしれません。児童たちも展示中のカードに真剣に目を通しています。
展覧会期が終わったら、これらのアートウォッチングカードは、児童たち・安部さんに届けられます。
これから会場にお越しくださるみなさまも、カードにご記入いただくだけで、この場に能動的にご参加いただくことができます。
この作品たちに出会えるのも、ここだけの体験。限られた会期ではございますが、ぜひ、「線たち」に出会いに、いらしてください。
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photo: Kozo Kaneda
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第15回アーティスト・イン・スクール
安部典子(美術家)×川口市立並木小学校6年生96人 〈線でみつける〉
授業期間:2021年10月~11月 全5回
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展覧会〈Drawing-線たちは出会う—〉
安部典子作品展〈発話する線〉 2021年10月30日~12月5日
〈線でみつける〉成果発表展 2021年11月6日~12月5日
アトリア公式webサイトから詳しい情報をチェック!
by atlia
| 2021-11-17 15:49
| 学校×アトリア
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