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アートさんぽ「芝園団地建築めぐり」を開催しました
10月24日(日)、アートさんぽ「芝園団地建築めぐり」を開催しました。講師は照井啓太さん(団地愛好家/『公団ウォーカー』主宰)と岡﨑広樹さん(芝園団地自治会事務局長)。多国籍な住民に注目が集まる場所であることを踏まえつつ、団地建築・空間的な視点で団地をめぐり、芝園団地ならではの魅力を多面的に探ろうという企画です。

蕨駅近くに集合した参加者はレクチャーの会場である旧芝園小学校に向かい、まずは講師お二人のレクチャーから始まります。
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照井さんは団地設計の歴史から、芝園団地の設計についての分析まで、盛りだくさんなお話です。
戦後の住宅不足解消のため、昭和30年に日本住宅公団が誕生、団地設計の試行錯誤がはじまり、昭和40年代にはマンモス団地がつくられるようになります。
芝園団地が完成したのは昭和53(1978)年3月。このころには「高・遠・狭」の団地批判が巻き起こるようになり、量から質への大転換があったそう。団地愛好家である照井さんはとても面白そうに興味深い様子でその歴史を振り返ります。芝園団地の見どころが紹介されると、うなずきながらメモする参加者の姿もみられました。
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つづいて岡﨑さんは、団地内の昔の写真の紹介にはじまり、人口構成の変化を取り上げ、自治会事務局長の立場からご自身の取り組みを交えたお話へとすすみます。
芝園団地を含む川口市芝園町は、1980年代から人口が減りはじめ、90年代からは外国人が増えつづけています。2016年には日本人よりも外国人が多くなったとのこと。その多くはアジア系の人だそうですが、住民が多国籍であることで起こる生活トラブルとどのように向き合っているか、さらに目指す関係性について、岡﨑さんからの熱いお話に参加者はぐっと引きこまれている様子。
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休憩を挟み、いよいよ屋外に出て団地内を歩いてめぐります。
最初の説明ポイントは団地正面の石碑と記念碑から。記念碑には、この場所がかつて鉄道車両をつくっていたことが記されています。団地の名前が刻まれた石碑とともに、芝園団地の歴史を確かめながら、中へと進んでいきます。
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この広場の中心に立つと、団地の建物の迫力がぐっと感じられます。近年塗り替えられたという外壁の色はカラフルで優しい色合い。見上げて撮影をする参加者も。
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冒頭で照井さんが取り上げた芝園団地のみどころの一つは「屏風みたいな長~い住棟」。下の写真に写っている棟がその一部で、これは線路沿いという立地環境に配慮した防音壁の役割も担っています。ここは線路と反対側ですが、電車がいつ通ったか分からないくらい、とても静か。
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団地の中に進んでいった先には、遊具が置かれた空間と、球技ができそうな広々とした空間が2つ並んでいます。実は団地内の公園には「子ども」向けと、中学生等の「中(なか)ども」向けのものがあるそうで、住民の年齢層を細かく想定した設計がされていることがわかります。
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つづいて線路側に移動し、多言語表記のゴミ捨て場の前に着きました。このゴミ捨て場には日中英の3か国語で説明があり、外国から引っ越してきた住民に日本のゴミ出しのルールを分かってもらえるようにという工夫だそう。このとき、立て続けに通る電車の轟音に参加者もスタッフもびっくり。住棟が防音壁として機能していることを実感しながら岡﨑さんの話に集中します。
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ここは棟と棟の接続部に位置するオープンスペース。小さな子どもが自宅からエレベーターで1階まで降りずに遊べるよう計画されたもので、ほかの団地でもこのような空間が見られるそうです。
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再び休憩を挟み、別の棟に移動します。
これは吹き抜けの空間を見通しているところで、この楕円形の白い柵のデザインに、「昭和っぽい」という声が聞こえます。
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住棟をめぐった後は商店街をのぞきます。芝園団地には、住民の食文化を反映するようにアジアの食材を扱ったお店が多いことが特徴的。見慣れない野菜や果物が並んでいる様子に参加者もスタッフも興味津々です。
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歩く時間はここまで。旧芝園小学校にもどり、講師からまとめの言葉を聞いて解散です。
団地建築が好きな方や芝園団地そのものに興味があった方など、年齢も関心も幅広い参加者のみなさま。
講師お二人の専門的な視点から芝園団地を学び、体感し、実りある時間となったようです。
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by atlia | 2021-11-05 11:30 | アートさんぽ