ガラス工芸の技法のひとつであるパート・ド・ヴェールに挑戦する「はじめてのガラスワーク」を、9月12日(日)と19日(日)の2日間で開催しました。講師はガラス作家の井上剛さんと井上枝利奈さん。電気炉を使用するキルンワークを中心としたガラス工房で活動されています。
フランス語で「ガラスの練り粉」を意味し、古代メソポタミア時代から伝わるパート・ド・ヴェール。凹凸を生かしたプレート状の作品に、少人数でじっくりと取り組みました。

パート・ド・ヴェールは、石膏型に色ガラスの粉をつめて、窯で焼きつくり出します。
まずは、ハガキ大サイズの石膏型に、事前に用意してきた下絵を写し彫刻刀で彫る工程からスタート。熱で溶かしたガラスは、彫った絵や模様に合わせて立体的に固まります。慣れない石膏の硬さに苦戦しますが、浮き上がらせたい部分を想像して深く彫りすすめました。

続いて、彫り終わった型にガラスの粉を入れていきます。ガラスの粉は絵具のようにのびず、色をのせるような感覚のため一筋縄ではいきません。思ったより根気がいる細かい作業に、参加者の表情も真剣そのもの。

ガラスの粒は溶ける際に、小さくなるほど多くの気泡が入り不透明に、大きくなるほど透明度が高くなるため、この違いを生かす制作がポイント。様々な大きさを組み合わせることで、表現の幅が広がります。
今回は、絵柄に粉状、プレートの土台部分には小石状のガラス粒を入れ、型全体をいっぱいにしました。
完成が待ち遠しいですが、ここで初日は終了。次の開催日までに、講師が自身の工房に作品を持ち帰り焼成します。


2日目は、ガラスの歴史や手法を学ぶレクチャーをうけ、実際に電気炉で焼かれる様子を写真で見ました。
手間がかかるパート・ド・ヴェールは、量産に向かず一度衰退し19世紀に再興され、現在は幻の技法と呼ばれていること、溶融したガラスは温度を徐々に下げないと割れてしまうため焼成に数日間かかることなど、井上さんの話に参加者が大きくうなずく姿もみられます。

そして、いよいよ焼きあがった自分の作品とご対面!石膏型を緊張しつつハンマーで割り取り出してみると、色彩豊かな起伏が現れます。
うまく色がでない・彫りが浅いといった反省や、柔らかい色合いの濃淡ができる偶然の成功を味わいながら、紙ヤスリで丁寧に仕上げました。


繊細で長時間の作業は大変でしたが、「ガラス工芸の2回目も参加したい」等の意欲的な感想も。


パート・ド・ヴェールの一連の工程を学んだ実技講座。ガラスの硬質なイメージとは違う優しい風合いの作品制作は、ガラス工芸の奥深さを知る貴重な体験となりました。
