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アートさんぽ[匠と行く!神社で狛犬ウォッチング]を開催しました
10月24日(土)、アートさんぽ[匠と行く!神社で狛犬ウォッチング]を開催しました。今回の行き先は川口市の総鎮守である川口神社です。境内に実は五対もある狛犬に注目し、鋳物だけに留まらない地域のものづくりの豊かさに触れることが目的です。
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先導する2人の講師の1人目は、県内各地の狛犬に詳しい落合範崇さん(埼玉県教育局 文化資源課 文化財活用担当)。集合場所のかわぐち市パートナーステーションにて、まずは狛犬の基礎知識と鑑賞ポイントをレクチャーいただきました。
古代オリエントのライオン(獅子)をルーツとし、日本では空想上の動物として様々に展開していった狛犬。全身のポーズや尻尾の形などに時代または地域の特徴が見られるそうです。脱力感に思わず笑ってしまう前川神社の狛犬などを例に見ながら、普段はなかなか意識しない多彩さと見どころを学びました。





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川口神社ではどんな狛犬に会えるでしょう。期待を胸にいざ出発!爽やかな秋空の下を歩いて、途中にある小川石材店に立ち寄りました。待っていたのはもう1人の講師の小川長四郎さん(石彫工/㈲小川石材店代表)。安永3(1774)年創業の石材店の八代目で、川口神社の狛犬も手掛けた腕利きの匠です。

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まずは材料となる石のお話を小川さんにうかがいました。配られた石材リストには日本産のものだけでも70を超える名称が…!微妙に異なる色や粒子の具合から、種類や産地も見分けられるといいます。石目(割れやすい方向)が素直で彫りやすいみかげ石、硬くて丈夫な代わりに石目が複雑で加工が難しい「小松石(安山岩の一種)」など、それぞれの性質で使い分けるのだそう。

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更に特別な体験も用意されていました。小川さんのご子息である小川明彦さん・和彦さんの指導のもと、石の塊を彫ってみます。手にした道具の重さに驚く参加者たち。慎重にノミを入れようとしますが刃先が滑ってうまく彫れません。石の硬さを実感するなか「一体どうやって思う形につくれるの!?」と湧き上がる疑問が口に出ます。

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初めての体験で身近な石造物への関心が高まったところでいよいよ川口神社へ。裏口から境内に入ると、早速一対の狛犬が出迎えてくれました。
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江戸時代末期に小川さんの先祖が手掛けた狛犬です。穏やかな表情と全体に丸みを帯びた静謐な佇まい、背中に並ぶ突起や優美に流れる尾も特徴的。元々は拝殿前にありましたが火災で破損したのち、役目を終えて今の場所に移されました。頭上の札には作者と奉納者、材料は小松石とも記されています。

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そして拝殿前で参拝者を迎えているのは小川さんが自ら手掛けた狛犬。台座には「八代目 長四郎」と並んで「七代目 酉蔵」「九代目 明彦」の銘もあり、親子三代で製作・奉納したことが分かります。先祖作に敬意を表し忠実に写したそうですが、まだ新しいため彫り口が鋭く、よく見ると全身に細かな毛並みが…!彫る体験を思い起こせば技術の素晴らしさがより鮮やかに目に映ります。落合さんによれば、一軒の石材屋が代替わりで手掛けた新旧の狛犬を一箇所で見られる例はとても珍しいそう。

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境内正面の大鳥居に立つ狛犬はかなり大型で勇壮な雰囲気。材料は白くて粒子が荒い「稲田みかげ」で、太平洋戦争開戦の年に奉納されたことが台座から読み取れます。前脚を真っ直ぐ伸ばして大きく胸を張るポーズはこの頃の狛犬に多く見られ、小川さんによれば大鳥居と狛犬、足元の敷石までを市内の鋳工所が奉納したのだそう。

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境内の東側に回ると2箇所の入口に鳥居が1基ずつ。その手前に狛犬が一対ずつ、玉垣の門柱に据えられています。台座が無いため来歴不明ですが、材料はいずれも小松石で、黒ずんだ色から初めに見た狛犬よりも更に古いのではないかと小川さんは推理します。小さいながらも彫り貫きがある凝った尻尾などにつくり手の腕の良さが見えるとのこと。一方落合さんは量感ある筋肉の表現に注目するなど、互いの眼でとらえる特徴や印象について語り合いました。

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解説を聴きながらゆっくりじっくり目を凝らす狛犬ウォッチングは一時間におよび、五対全ての鑑賞を終える頃には大分陽が傾いていました。「神社一箇所だけですごい充実感!」と満ち足りた表情の参加者たち。日頃から狛犬に親しんでいる方、そうでない方の両方にとって新鮮な体験となったようです。
アンケートには「普段はできない体験を通じて狛犬への新しい視点を得た。」「歴史と文化の奥深さを知り、川口をより身近に感じるようになった。」といった感想が寄せられました。狛犬はどこのまちにもあるようでそれぞれが唯一無二。つくり手の思いにも触れながら、日常の中にある価値を再発見できたのではないでしょうか。
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by atlia | 2020-11-03 11:12 | アートさんぽ