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アートさんぽ[川口モダン建築探訪]を開催しました。
10月21日、アートさんぽ[川口モダン建築探訪]を開催しました。ものづくりのまちとして古くから栄えた川口には、その歴史を伝える特徴的な建物があちこちに。市内の指定文化財建築を中心に、明治~昭和期に建てられた住宅や商店を訪ね歩きました。
講師は元埼玉県立近代美術館主席学芸主幹の伊豆井秀一さん。美術館在籍時より数多くの建築ツアーを実施し、取材した住宅は数百にも及ぶそう。川口の建築についても鑑賞のポイントを熟知しています。
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ぽかぽかのおさんぽ日和、川口元郷駅(埼玉高速鉄道)を出発してまずは「旧田中家住宅」に向かいました。ちょうど前日、国の重要文化財指定の見通しとなったことが発表されたばかりの旬な建物です。




レンガづくりの洋館は大正時代、味噌醸造業と材木商で財を成した四代目田中徳兵衞に建てられました。伊豆井さんの解説によれば、設計者の櫻井忍夫(さくらいしのぶ)は、明治のお雇い外国人、ジョサイア・コンドルの孫弟子。モザイク模様の寄木張りの床や、上げ下げ窓、格子状の天井などに当時の和洋折衷住宅の特徴が見え、部屋ごとにデザインの異なる照明器具、漆喰の装飾も目を引きます。
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施主と設計者のこだわりを最も色濃く感じられるのは三階の大広間。かつては芝川を見渡せたという大きな窓や、神殿のような柱、豪華な調度品などに賓客をもてなす意気込みがあふれています。資本を元手に政界に進出し、貴族院議員となった四代目田中徳兵衛。出陣式なども行われたはずで、その場面を想像すれば、華やかさとともに緊張感も伝わってくるよう。
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かつての地場産業の権勢ぶりを振り返ったあと、路線バスで本町に移動しました。中世には鎌倉街道の宿場として賑わった地区です。交差点の角にはレトロな銅板葺きの「福田屋洋品店」。同じ通りに古い薬局、接骨院、理髪店などが軒を連ね、明治創業の銭湯も数年前までありました。歩けば何でも揃うこのあたりは「人々の暮らしの縮図のようだ」と伊豆井さんは言います。
鋳物工場が集中していた金山町に隣接することから、その業に携わる名士たちの住まいもあります。二軒の「永瀬家」はそれぞれ、川口鋳物の長い歴史を伝える一族のお宅。今回特別に公開いただきました。
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一軒目は大正時代に建てられた洋風住宅。「フランス積み」のレンガ塀で囲まれ、母屋の見事なステンドグラスが鋳物業の隆盛を物語っています。多彩な色ガラスが四季の風景を描き出し、まるで絵画のような窓。その美しさに溜息しながら一階の洋間を見学し、屋外にあるレンガづくりの倉庫にも注目しました。なんと明治時代、市内で最初に建てられた動力用火力発電所の遺構だそうで、敷地内のすべてが地域の宝と言えそうですね。
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二軒目は昭和期に建てられた和洋折衷住宅。笑顔で出迎えてくださった家主さんから一族の歴史を紹介いただき、伊豆井さんから建物の見どころを聞きました。こちらも幾何学模様のステンドグラスが邸内を彩り、洋室には大理石のマントルピース、和室には繊細な組子細工を施した書院があります。隅々まで品よく、手入れの行き届いたお宅に「なんて素敵…!」と参加者が感嘆する一方、「凝っているからこそ守り続けるのはなかなか大変ですよ。」と家主さん。先祖からの贈り物を大切に受け継ぐ意志をうかがうことができました。
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金山町に移動し、到着した最後の目的地は登録有形文化財の「旧鋳物問屋鍋平別邸(川口市母子・父子福祉センター)」。鋳物問屋四代目嶋崎平五郎によって明治時代に建てられ、その後数回にわたって増改築されたユニークな建物です。モザイクタイルの色彩あふれるお手洗い、輸入された銘木やガラスを多用した座敷回りの絢爛さに目を見張る参加者たち。往時は資産家たちが集い、重要な商談が行われていたに違いありませんが、現在は公共の施設として広く市民に利用されています。
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都市開発の進む川口に残るモダン建築。身近に親しむことは全ての人にとって重要だと伊豆井さんは説きます。「まちに歴史があるのと同じく、住む一人一人の歴史が建物に刻まれている。人々の暮らしを知り、自分とのつながりを見出してこそ心豊かに生きていけるのではないか。」と、締めくくりました。

参加者からは「普段はなかなか見られない建物、贅を尽くした意匠に触れ、心が豊かになった。」「マンション群の川口しか知らなかったが、こんな素晴らしい歴史があると知る良い機会になった。」などの感想が寄せられました。一日を通してまちの歴史文化を肌で感じ、魅力を再発見できたのではないでしょうか。

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by atlia | 2018-10-24 16:22 | アートさんぽ