7月27日(木)、開催中の企画展〈第6回新鋭作家展 影⇆光〉に関連して[夏休みの宿題応援ギャラリートーク]を開催しました。アトリアを訪れた学生のみなさんに、スタッフが展示作品について分かりやすくお話しするというもの。中学生のグループや家族連れを含む13人が参加してくれました。
まずは佐藤史治+原口寛子の作品《アイシャドー》を鑑賞しました。展示室のあちこちに散らばる小さなモニターには夜のまちに光るネオンや看板の一部が映し出され、文字のかたちを2人の手の影がなぞっています。一風変わった影絵遊びを間近で見ると聞こえてくる2人の声。文字のかたちをなぞると同時に声に出して読んでいますが、ゆったりとした筆文字の「ゆ」は脱力気味に、ポップなデザインの「Po」は歯切れよくといった具合に手の動きや声の出し方に違いがあり、文字1つ1つがもつ特徴や印象が際立って見えてきます。
これらの「光」は佐藤さんと原口さんが川口のまちを何度も探検し集めたもの。スクリーンには荒川の鉄橋を電車が走るなど、まちを象徴するようなシーンも映し出され「ここ知ってる!」と参加者からも声が上がります。けれども「影」と「光」だけがくっきりうかんで立体感を失った風景はどこか幻のよう。参加者数人でスクリーンの裏側に入り、自分たちの影を映像に重ねてみました。影絵になってみることで、アーティストが旅した「影」と「光」の世界を追体験できるかもしれません。
金沢寿美の作品《新聞紙のドローイング、日常の紙のドローイング》の壁の2面を覆う巨大なカーテンは実は新聞紙。鉛筆をつかって紙面の文字や写真を塗り潰したり塗り残したりすることで白黒のコントラストや光沢が生まれ、星空のような画面が広がっています。近づいて見てみると塗り残された部分に様々なイメージが。世の中で日常起きているたくさんの出来事の欠片です。闇の中にぼうっと浮かぶ人の顔にハッとし、皮肉めいた言葉にクスリとする参加者たち。仲間同士で指さし会話しながら楽しみました。
一方テーブルの上には様々な人の「日常」が広がっています。展覧会会期前、アトリアを訪れた人から身の周りにある紙を募集し、思い思いに塗り潰す機会も設けました。買い物のレシートや漫画本、学校の通信簿や銀行通帳まで。紙の多彩さに感心しつつ、「一番暗い」「一番柔らかい」など塗り方の違いにも注目しました。紙を鉛筆で塗る作業自体は単純なのに、1人1人の視点や性格の違いまでが見えるようです。