川口市内の小中学校にアーティストやデザイナーを派遣し、特別な授業を行うプロジェクト。2006年の開館以来、児童・生徒が講師との交流を通じて「本物」に出会い、互いの想像力・創造力・コミュニケーション力を育むことを目的に実施しています。
今回のタイトルは[ひびけ!ひろがれ!音宇宙]。川口市立辻小学校の3年生がパフォーマー:尾引浩志とともに身のまわりから素敵な「音」を見つけ出し、その在りかやきき方を多くの人に伝える活動を展開、プロセスと成果がアトリアに展示されます。
講師の尾引(通称ビッキー)さんは、まるで目に見えない塵や頭上の星の感触を探り当てるかのように、自分の身体やまわりにある「音のかけら」をひろい上げて操る達人。普段は気づかないけれど実はすぐそばに広がっている「音宇宙」を案内する「音ガイド」として辻小にやってきました。挨拶代わりに得意の歌や楽器を奏でます。
南シベリアのトゥバ共和国に伝わる弦楽器「イギル」に合わせて歌う「ホーメイ」は、お経のような低音と笛のような高音がうねりながら重なり合う不思議な響き。一方首から下げた小さな「口琴」はビヨヨ~ン!と何ともヘンテコな響き。奏者の口の中や頭蓋骨と共鳴して独特な「音」が生まれるのです。
そうです。これからおよそ2か月間の授業を通じてみんなも無限の「音宇宙」を旅し、「音ガイド」になるための研修を積み重ねていくのです。
「平たいビンに水を入れて角度を変えながらたたくと音の高さや音色が変わる。」
「色々な場所で思い切りくしゃみをすると響きが変わったり音がはね返ったりして面白い。」
「指の先でほっぺたをたたきながら口の大きさを変えると音の高さが変わって曲の演奏ができる。」
などなど。
紙の両端を持って真ん中を机の角にこすりつける、目の前にかざしてパンチをお見舞いするといった勢いのある「音」もあれば、耳元で少しずつ破くといった微かな「音」も。披露される多彩なアイディアをみんなで共有し、面白さを味わうことで「音宇宙」の入口に立てたかも?机の上に散らばった大小の紙くずも可能性を秘めた「音のかけら」。袋に入れて大切に保管します。
「音」を活動の中心に据えながら、実は音楽ではなく図工の時間に行うこの授業。目に見えない世界を探求することで、それまで意識していなかった自分自身の感覚や生き方を知り、物事の見え方が変わることを最終的な目標としています。初めての体験を児童たちがどう受けとめ、そこからどんな発想や表現が生まれるか、講師や先生方と一緒にスタッフもわくわくしているところ。全6回12コマの授業の様子を当blogでお伝えしていきます。普段はなかなか公開される機会のない児童の学校での取り組みや成長する姿を、どうぞお楽しみに!