公式ホームページへ
ATLIA STAFF BLOG
たのしい実技講座[金継ぎ技法入門 -繕いの器-]を開催しました
9月17日(土)、伝統技法「金継ぎ」を体験する講座を開催しました。
金継ぎとは割れたり欠けたりした器を漆でつなぎ合わせ、その部分を金で装飾しながら修復する修理法のこと。通常は漆を乾かすのに数日かかりますが、今回はどなたでも気軽に楽しんでいただける「入門編」として新うるし(漆の代用品として使用される塗料)を使って数時間で仕上げる方法を学びました。
講師は川口市内在住の金継ぎ師、吉沢博さん。今回のような簡易的な方法も含め幅広い金継ぎ技法に精通しておられます。
c0222139_2262686.jpg
会場にやってきた参加者はさっそく持参した器の傷を吉沢さんにチェックしてもらいます。そっと開けた包み紙から取り出したのは、長年愛用の湯呑み、夫婦茶碗、自作の香炉など、どれも思い出深い大切な器ばかり。
「これは良い器ですねぇ」「きっと金が映えるでしょう」
自慢の器を吉沢さんに褒められ、参加者のやる気は倍増です。

c0222139_22102185.jpg
講座が始まると、参加者は映像やテキストを見ながら器の修理方法の歴史を学びました。
金継ぎは室町時代に始まったと言われていますが、その源流は縄文時代にまで遡るというのだから驚きです。割れた土器を漆で接着し、光沢のある砂粒で装飾したものが縄文遺跡から発掘されているのだとか。これはほとんど金継ぎと同じ考え方です。
そこから現代へと受け継がれる間に開発された修理技法は多種多様。金具で器をホチキスのように留める「かすがい継ぎ」、欠けた部分に別の器の欠片をはめ込む「呼継ぎ」、 まるで一度も割れていないかのように修理する「とも直し」。金継ぎ師は器の用途やデザインなどに合わせてこれらの技法を使い分けるそうです。

c0222139_2217474.jpg
金継ぎの一通りのやり方を吉沢さんに教えていただいた後、それぞれの器で実践スタート。割れた部分は接着剤でつなぎ合わせ、欠けている部分には小さな和紙とガラスの粉を埋めます。和紙の大きさは1cmに満たないどころか、ほんの数ミリ。うっかり落として見失いそうになりながらも、全神経を指先に集中させて取り組みました。
さらに埋めた部分の表面をヤスリがけして滑らかにします。ここでの磨き残しは金の発色不良のもと。器を光にかざして何度も確認し、凹凸がある場所には再び接着剤を詰め、徹底的に磨き上げました。

c0222139_22141943.jpg
十分にヤスリがけができたら、割れ目・継ぎ目をなぞるように新うるしを塗ります。はみ出さず、塗り残しのないよう、そして均一な厚みになるよう。息をするのも忘れるほど慎重に筆を進めました。

c0222139_2226247.jpg
塗った新うるしを数分乾かし、いよいよ金紛を蒔きます。
筆に金粉をたっぷりつけ、新うるしの上からサッとなぞるように。数回なぞっただけでもしっかりと紛がくっつきました。
傷の修復にかけた時間に比べると金蒔きはほんの一瞬。でもたったその一瞬で、まるで新しい命が吹き込まれたかのように、器にしっとりとした輝きが宿ったのです。
金を蒔いた器を見た途端、参加者の表情までも明るくなりました。

c0222139_2224955.jpg
出来がった器は金が剥がれないようそっと机に並べ、全員で見せ合います。締めくくりに参加者一人ひとりが今日の講座を振り返って感想を述べました。
「壊れてから長い間しまっていたけれど、また使えるようになって嬉しい」
「金継ぎしたことで以前よりもっと素敵になった」
器を手にする参加者の眼差しは一様に優しげ。講座終了後には、器の入った箱をまるでわが子のように大事そうに抱いて帰る姿も見られました。

壊れて使えなくなった器を修復し、新たな魅力をも与える金継ぎ。傷によって価値を増すという考え方は、器が今よりもずっと貴重だった時代の先人たちの「心」から生まれたものに違いありません。
今回の講座は、器を使い続けるための知恵だけでなく、器を大切にする気持ちをも学ぶ機会ともなりました。

c0222139_13324919.jpg

by atlia | 2016-09-23 09:00 | 鑑賞講座・実技講座