いつの間にやらたくさんの記事を発信してまいりました連載「ここにも通信」も、そろそろ終了。
アーティスト・出品作を企画スタッフ目線で紹介する記事シリーズも、今回が最終回!
最後は馬場知子さんの作品をご覧いただきます。
馬場さんの作品はアトリア会場の室内入ってすぐ!

L字で並ぶと、青と黄色という補色の対比が白い壁に映えます。
これらを「銅版画」とお話しすると、驚かれる方も多いのです。
え、これって「版画」なの?にしては、随分、多くの表情がある気がするけれど、と。
版画、というと木版画や一色のものをやったことはあっても、特に銅版画の多色刷りは自分では体験したことがない、という方も多いかもしれません。

いくつもの青、そしてそこに映える黄。シャンパンとグレーが霧のように行き交い、爽快感のある余白に優しさを与えています。
リズムある色づかいは紙のやわらかな風合いと相まって、立体的にすら見えるように感じられます。
そう、その「紙」も本作の特徴のひとつ。馬場さんは版をつくって紙に刷りとっていく、だけでなく、紙もつくってしまうんです。
え、紙もつくってるの?さらに驚き。

中心から右側に連続して青いモチーフがある部分に近づくと、同じ色のような青でも、もやっと広がっている部分と、はっきり線・面が読みとれる部分と、特徴があることがわかります。

紙の材料となるのは、コットンの繊維。普通は白っぽいのですが、それに顔料で色をつけます。
これが、色が「もやっと広がっている部分」の材料。
まず、白いコットンを水に溶かし、シート状になるよう枠などに流し込みます。そこに同じく水に溶かした色付きのコットンを部分的に流したり、置いたりするのです。
丁寧に乾かしたら、オリジナルの紙が完成!色つきのコットンによってすでに描画された状態の紙、とも言えるでしょうか。
繊維がからまりあって出来た紙には自然に凸凹ができ、作品に風合いにつながっていきます。
そこに「はっきり線・面が読みとれる部分」をつくるエッチングの版を重ねます。銅版を刷っていくときは上からぐっと圧力をかけるので、版が強くあたる部分は紙がちょっと凹む感じになります。それが元からあった立体感とも響きあっていくのですね。
銅版画とひと口に言っても色々なものが、というよりもむしろ、版画というイメージの範囲には収まりきらない、豊かな表現がこの1枚に詰まっています。
それが、3枚。連作になることで、より世界が広がっていきます。
軽やかなリズムから、じんわりと。染みいるように白い壁にも伝わって、空気をつくるよう。
本展では、それが展示室内の入口に設定されています。
壁に沿って、爽やかなリズムがみなさまをご案内。
アートの世界への入口は、いつだって軽やか、なのです。
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平成28年春の企画展/開館10周年記念事業
〈ここにもアート かわぐち〉
アトリアから作品が飛び出した!ここにも、そこにも、どこでも、アート!
今まさに発展を遂げているまち:川口で、みずみずしい感性のアーティストたちの表現があふれ出す!油絵・日本画・彫刻はもちろん様々な作品を市内の施設でご覧いただけます。
開催期間:2016年3月19日(土)~5月14日(土)
展示会場:川口市立アートギャラリー・アトリア、川口駅前複合施設キュポ・ラ内各所、川口市立グリーンセンター
観覧可能時間:施設によって異なりますので、下記施設のホームページへのリンクをご参照ください。
出品アーティスト:片庭珠実、角野泰範、馬場知子、山本智之、青木邦眞、高野浩子、佐藤裕一郎、杉田 龍、小林美樹、八田真太郎、後藤雅樹、羽山まり子、青木聖吾、遠藤研二、大和由佳、對木裕里、堀口泰代
展示会場リンク
施設名をクリックすると該当の施設のホームページへリンクします。
開館時間やアクセス情報をお確かめの上、ご来場ください。
川口市立アートギャラリー・アトリア
川口市立映像・情報メディアセンター メディアセブン(キュポ・ラ7階)
かわぐち市民パートナーステーション(キュポ・ラM4階)
川口駅前行政センター(キュポ・ラ4階)
川口市立グリーンセンター
