公式ホームページへ
ATLIA STAFF BLOG
ここにも通信![はじめての銅版画]を開催しました。
3月26日(土)・27日(日)の2日間、開館10周年記念展〈ここにもアート かわぐち〉に関連し、
銅版画の技法に触れ奥深い表現をお楽しみいただく実技講座を開催しました。
講師は出品者・版画家の馬場知子さん。現在アトリアで「エッチング」という技法をつかった作品を展示されています。
今回は参加者さんも同じ技法での制作に挑戦しました。

c0222139_1436172.jpg
最初に様々な作例を参照しながら、手順を教えていただきました。
エッチングは簡単にいうと、銅版にあらかじめ塗っておいた防蝕膜をニードルと呼ばれる先端の尖った道具等で引っ掻くことによってはがし、腐食液という銅を溶かす溶剤に浸けその部分を腐食させて溝をつけ、(凹)版をつくる技法。いくつもの工程を経て完成するため、一度聞いただけでは覚えられないほど複雑です。参加者さん、ちょっと不安気…。
でも大丈夫。馬場さんは「とにかくやってみないことには」と参加者さんを勇気づけます。1日目は小さめの銅版に自由に試し彫りし、刷りまでの工程を一度やってみることにしました。

c0222139_22458100.jpg
まずはニードルで描きますが、要は”防蝕膜をはがせばいい”ということなので、サンドペーパー、油性の溶剤なども用いて思い思いに描画しました。手を加えた部分は防蝕膜がはがれ、もとの銅版がキラリと覗きました。木版と違って力がいらないのであまり「彫っている」という感覚はなく、実際この時点ではインクが溜まるための溝はできていません。
その後、銅版を腐食液に浸けると、描画した部分だけが腐食し、インクが溜まる溝ができました。浸けている時間が長いほど線は深く太くなっていきます。

木版やゴム版など手の力で直接溝をつくる版画技法は馴染みのある方も多いですが、銅版に溝をつくるのは化学の力。参加者さんからは「なんだか不思議だねぇ」との感想が。

c0222139_15445616.jpg
銅版の腐食が終わったらいよいよ刷り。ゴムべらで黒いインクを版全体につめます。そのあと専用の布で表面を軽く拭きとると、余分なインクがとれて腐食させた溝の中にだけインクが溜まっていました。髪の毛ほどの細さのところにも、よく見るときちんとインクが入ってる!


c0222139_22481311.jpg
そして出ました、アトリアの秘蔵っ子、重厚感あふれるプロ仕様のプレス機(実は川口製)。
銅版の上に紙を重ね、ゆっくりとハンドルをまわしてプレスしました。
噛みあいながら回転する歯車がカッコいい。思わず全員で見惚れてしまいました。

c0222139_11244283.jpg
刷り上がりはこのような感じに。一つの版の中に多くの技法がギュッと詰まり、まるで抽象画のよう。
まとめとして、参加者さん全員の試し刷りを一堂に並べ、それぞれがどのような方法で描かれたのか情報交換しあいました。

c0222139_125776.jpg
2日目は本制作。用意してきた下絵を銅版に写します(新しい下描きを用意し直して来られた方も)。
気合い十分、ニードルを持つ指先にも力がこもっていました。1日目に学んだことを振り返りながら描画しました。覚えたての技法をさっそく使ってみようと、エッチング以外にも挑戦した方も多くいらっしゃいました。

c0222139_15443884.jpg
時間を忘れて没頭すること、3時間半。
描画・腐食が一通り済んだところで本番の刷りを行いました。
プレスされた紙を銅版上からめくり仕上がりを確認する瞬間は、期待と緊張が入り混じります。

c0222139_15451615.jpg
作品が刷り上がった後は、一列に並べて観賞会をしました。
何種類かの技法をミックスしたものが多く、一つの作品の中でも部分によって異なる技法が用いられるなど、工夫が凝らされていました。
しかし、まだまだやり足りない参加者さんからは「もうちょっとこうしたい」「この部分を変えるにはどうすれば?」というご意見やご質問も。

馬場さんに伺ったところによると、最初に思い描いてたイメージと実際に刷った作品のイメージがピッタリ合うことはほとんど無いとのこと。でもそこが面白いのだそうです。刷ってみて描き足し、また刷ってみて手を入れ作業を繰り返しながら、下絵とは違った魅力のある世界ができあがるようです。
小さなサイズの中に、つくり手の豊かな時間が詰まっている銅版画。展覧会で作品を鑑賞するときにもそのことを思い返してみると、また一味違った見方ができそうです。

4時間×2日間と長めではありましたが、それでも名残惜しささえ感じるような実技講座となりました。
参加者さんが今回の講座をきっかけに、銅版画の世界により関心を持っていただければ嬉しいです。



---
平成28年春の企画展/開館10周年記念事業
〈ここにもアート かわぐち〉

アトリアから作品が飛び出した!ここにも、そこにも、どこでも、アート!

今まさに発展を遂げているまち:川口で、みずみずしい感性のアーティストたちの表現があふれ出す!油絵・日本画・彫刻はもちろん様々な作品を市内の施設でご覧いただけます。
開催期間:2016年3月19日(土)~5月14日(土)
展示会場:川口市立アートギャラリー・アトリア、川口駅前複合施設キュポ・ラ内各所、川口市立グリーンセンター
観覧可能時間:施設によって異なりますので、下記施設のホームページへのリンクをご参照ください。


出品アーティスト:片庭珠実、角野泰範、馬場知子、山本智之、青木邦眞、高野浩子、佐藤裕一郎、杉田 龍、小林美樹、八田真太郎、後藤雅樹、羽山まり子、青木聖吾、遠藤研二、大和由佳、對木裕里、堀口泰代

展示会場リンク
施設名をクリックすると該当の施設のホームページへリンクします。
開館時間やアクセス情報をお確かめの上、ご来場ください。
川口市立アートギャラリー・アトリア 
川口市立映像・情報メディアセンター メディアセブン(キュポ・ラ7階)
かわぐち市民パートナーステーション
(キュポ・ラM4階)
川口駅前行政センター(キュポ・ラ4階)
川口市立グリーンセンター
c0222139_0554056.jpg

by atlia | 2016-04-09 11:27 | 鑑賞講座・実技講座