公式ホームページへ
ATLIA STAFF BLOG
やさしい鑑賞講座[書の美しさを楽しむ]を開催しました
新春企画〈アートな年賀状展2016〉に関連し、
1月24日(日)やさしい鑑賞講座[書の美しさを楽しむ]を開催しました。

「書」というと、崩し字が読めなかったらどうしよう、歴史や知識をしらないといけないのかな?と思いがち。
今回の講座では、それを造形的な観点から鑑賞する「コツ」を教えていただきました。

講師には大島武さん、松本市美術館の学芸員さんです。
松本市美術館は地元出身の現代美術家:草間弥生のコレクションなどで知られているところですが、大島さんは同じく市内出身の書家:上絛信山(かみじょう・しんざん)の記念室を担当していらっしゃいます。
松本城の石碑に揮毫したという信山の作品を例に「書」の表現について、お話をいただきました。

上絛信山の作品は思い切りのよい筆運びが美しく、中国的でも日本的でもないと言います。
大島さんは、その「リズム」を音楽に例えて見てみる方法はどうか、と提案しました。
実際にどんなリズムが浮かぶか、ワークシートを配布し、参加者の方々にも考えてもらいます。
c0222139_2282759.jpg
行書と草書と言われても、その区別はちょっと難しいですが…。しかし、まずは音に例えてみましょう。
文字の線自体が太くどっしりとしたものが連続するところはバスドラム、すっと力の抜けた「払い」・幾重にもなっているようにも見える「かすれ」は軽やかなエレキギター…などと思うと、これはどちらかというとロックな感じでしょうか。
文字と文字の間にある余白は休符、あるいはなめらかに続けているところは途切れずにレガートで音がつながっていると考えたら、それを辿る音楽が聞こえるような気がしはじめます。
なるほど、これは言葉として意味を読み解こうとするだけでは見えなかった視点です。

書こうとする紙にむかうとき、書きたい言葉・文字をどう配置していくかも重要なポイント。
c0222139_2132982.jpg

「壮心」という作品では、文字だけで見るとそのバランスはちょっと変わっています。
「壮」は力強くはっきりとした太い線で、それを受ける「心」は3つの点画が均等に並び何重にもなるかすれた線でつながっており、多少対比的とも言えます。
また、「壮」に比べると「心」は頭がひっこんだように小さめです。しかし、小さめにすることで、横への広がりが意識できるとも言えそうです。
ここでは、いわゆる「余白」のとり方が重要。絵を描くときに「構図」を思い描くことと同じですね。
思い切って「心」の上を空けたことで、全体がつまりすぎず潔さが目立った作風になったと大島さんは言います。
そこに作者を示す印である落款がおかれたことで、縦のバランスも整っているよう。

c0222139_21374092.jpg
ここでも、実際に文字を並び替えてみるワークシートをつかい、参加者の方々にも「配置」に挑戦していただきました。
文字を切り取って白い紙の中で並び替える、パズルのような感じ。
並べるときは、単語としての意味だけでなく、どうやったら文字のつながりが自然になるかを考えます。もちろん、その周りの余白の大きさも加味して。
c0222139_21354772.jpg

ワークシートを離して見て全体のバランスを考えるなど、やってみると意外に悩む!
先ほどの「音とリズム」の話で好きな音楽に例えたように、参加者それぞれの個性も出た様子でした。

大島さんが用意してくれたワークシートは、「書」をより能動的に鑑賞するしかけと言えます。
今ある作品がどのように考えられ制作されたのか、自分自身で動かしながら考えてみることで、それが造形的に優れた感覚でつくられているものであると実感できました。

最後に、大島さんは信山が遺したという言葉を紹介してくれました。
c0222139_21462942.jpg
それは常に表現に迷い、探し、しかし深く考えた一生をあらわすもの。
「書」に向き合い続けた一人の芸術家の姿勢から読みとれるのは、その可能性は無限であるということです。大島さんがずっと追い続ける魅力も、わかる気がしますね。

言葉や文字として読むという「読解」という視点だけでない「鑑賞」の意味を改めて考え、多角的な「書」の魅力に触れた今回の講座。
しかしそのお話も「書」を楽しむ方法のほんの入り口。
様々な作品に触れてみたいと思えるきっかけとなりました。
by atlia | 2016-02-06 14:33 | 鑑賞講座・実技講座