外は雲一つない青空!街路樹の紅葉も美しく、まさにさんぽ日和です。アトリアで職場体験中だった中学生も参加者の列に加わり、工場までの道のりを歩いて行きました。
現地では出品者の宇波岳雄さんと工場長の鈴木曻さん、社内一のベテラン技師である香野勝美さんが出迎えてくださいました。工場内を見学する前に会社の成り立ちと最先端の仕事についてレクチャーを受けます。
創業68年の歴史を持つ田口型範は、鋳造用の木型・金型を製造する独立した企業としては日本最大手。整った設備と人材、ノウハウの蓄積によって、実験用の自動車部品など未来の技術開発に関わる製品を手掛けています。
アトリアに出品している《実験用スコープ付シリンダーヘッド》の型について、コンピュータシステムを用いた設計の工夫や鋳造のシミュレーションなど、展示では紹介しきれなかった技術が詳しく解説されました。かなり専門的なお話ですが参加者は興味津々。次々と質問の手が挙がります。
製作現場への期待が高まったところで2班に分かれて見学。木型部門ではノミやカンナでつくられた型、磨き上げられた美しい道具などを前に、職人が身につけるべき感覚や技能についてのお話を聞きました。製作工程のコンピュータ化が進んでも、ものづくりの基本の精神は大切に守られています。
一方金型部門では、「五軸加工」という特殊な技術を備えた工作機械を見学しました。上下・左右・前後の三軸で動く従来の機械では実現できない複雑な形を自動で削り出すハイテクマシーンで、これを楽しみにしていた参加者も。現代から未来に向けて、私たちの暮らしを支えるものづくりの出発点を目の当たりにすることができました。
工場までの往復路中、ちょっと気になるポイントに立ち寄りました。今や貴重なキューポラのある風景や壁板の木目が美しい古民家・・・
創業40年の喫茶店ではママとご主人から、周辺に鋳物工場がたくさん建っていた頃のお話を聞かせていただきました。
一見すればマンションや住宅が立ち並ぶばかりですが、歩くうちにどこからか伝わってくる機械加工の音や鋳物の匂い。古くから受け継がれてきたものづくりの文化が、日常の風景の中に息づいています。短い時間ではありましたが、街の記憶と未来に思いを馳せる充実したアートさんぽとなりました。