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ATLIA STAFF BLOG
アートさんぽ[織のみち-双子織のルーツ訪ねる]を開催しました。
11月2日(日)、開催中の企画展〈川口の匠vol.4 麗のとき〉に関連したイベント、アートさんぽ[織のみち-双子織のルーツを訪ねる]を開催しました。旧塚越村(現・蕨市)から伝わり、川口織物業の隆盛をもたらした「双子織」。その粋で独特な縞模様のファッションと織物文化の跡をバスで辿りました。
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まずは川口の織物業について予習。起源は江戸時代に旧塚越村で始まった高機(たかばた)による織物の生産です。質の良い製品が評判となって近隣の村々に生産が広がり、横曽根村や芝村(現・川口市)などでも機業(はたぎょう)を営む経営者が増えていきました。根岸や安行にもかつて機屋があり、青木や赤山では機織りの道具がつくられていたとか。地図で確認すると現・川口市の広範囲に波及していたことが分かります。
明治以降に綿織物の集散地となった蕨を中心に、地域一帯の特産品となった双子織は精緻な縞模様に特徴があります。糸を2本合わせて織るので、触り心地もしっかりしていて丈夫なのです。
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以上を踏まえたところでいよいよアトリアを出発。バスで向かった最初の目的地は「河鍋暁斎(かわなべきょうさい)記念美術館」です。迎えてくださったのは、暁斎の曾孫である館長の河鍋楠美(かわなべくすみ)さんです。
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初めにスライドで暁斎の画業について解説していただきました。真面目な絵を描いたかと思えば常識に囚われないユーモアのある絵を描く。宴会などで即興で描く席画にも長けており、多才な人物だったことが伺えます。また、庶民の代弁者として官僚を批判する風刺画を描いたり、外国人との交流を積極的に行うなど、時代を読み、先取る能力も持ち合わせていました。
その後は展覧会の鑑賞です。川口の善光寺が舞台となっている作品もあり、描かれている女性が縞模様の着物を着ています。もしかして双子織?想像が膨らみますね。

次の目的地は「蕨市立歴史民俗資料館」です。ここで解説していただいたのは、学芸員の佐藤直哉さん。江戸時代後期に旧塚越村で、5代目高橋新五郎が機屋を始めたことが、蕨の織物業隆盛の始まりでした。
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それ以前にも蕨や周辺の農家では織物がつくられていました。しかし彼は、マニュファクチュア(工場制手工業)が日本に定着するのに先がけて工場を開き、織物を大量生産しました。安くて質の良い織物と評判になり、地域の一大生産業へと発展したのです。
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江戸時代末期、6代目高橋新五郎がイギリスから輸入された糸を使って「二タ子(ふたこ)織」を織り出しだしたところ、たちまち江戸で評判となり、これが後に双子織となりました。質の良い製品を安く大量生産できた理由は、展示品のひとつ、「双子織縞帳」に貼られた輸入糸のラベルにヒントを見ることができます。新五郎の才覚を示す貴重な資料が参加者の注目を集めていました。

次は分館へ移動し、機織りの技術と双子織の復興活動を行っている吉田金造さんからお話を聞きました。
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吉田さんは平成2年に自社の工場を閉めるまで40年以上織物業に携わってきた方です。昔は50軒ほどあった機屋も今は残っていません。織物が衰退していくのを肌で感じながら、東京に近い地の利を活かし、情報をキャッチしながら時代に合わせて新たな製品をつくってきたそうです。

お話を伺った後は織物の体験です。吉田さんとともに機織りの活動をしている「はたごっこ」のみなさんに手ほどきをしていただきながらまずは綿の種取り。綿の中には種があるため、綿繰機という道具で種を取ります。綿をローラーの間に挟んでクルクル回すことで、手前に種がポトリと落ちる仕組みになっています。作業自体は簡単ですが、なかなか種が取れずに苦労している参加者も。
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次に、種を取った綿を糸車で紡いでいきます。慣れていないと同じ糸でも太さにバラつきが出てしまいますが、その糸で織った織物も面白い表情を見せてくれるそうです。
そして機織。手だけでなく両足を使いながらの作業で「難しい…」と声を漏らす参加者たち。
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女工さんたちが働いていた当時の様子を想像しながら資料館をあとにし、塚越稲荷神社・機神社へ移動しました。ここには5代目高橋新五郎と妻のいせが「機神様」として祀られています。そして、高橋家が代々信仰していた徳川家康も祀られています。話によれば、高橋新五郎は家康の夢のお告げにより織物業を始めて成功したそうです。
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最後の目的地はサイボー株式会社本社です。サイボー本社の裏には大きな商業施設がありますが、紡績工場の跡地に建てられてものです。戦後復興の波に乗り、初めは織物工場として始まり、時代に合わせて後に紡績工場として規模を拡大していきました。エントランスには工場があった当時の写真が並んでおり、その規模の大きさに参加者から驚きの声が挙がりました。
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今回のアートさんぽで多く出てきた言葉は、「先見の明」です。時代を先取る確かな目を持ち、柔軟に対応することで伝統を大切にしつつ、新たな流れを汲みとり後世に文化や技術を残すことができるのです。このことは〈川口の匠〉で取り上げている職人たちにも通じると言えるでしょう。
現在開催中の企画展〈川口の匠vol.4 麗のとき〉の会期は11月16日(日)までです。みなさまのご来場をお待ちしております。

今回の訪問先
・河鍋暁斎記念美術館
・蕨市立歴史民俗資料館
・塚越稲荷神社(機神社)
・サイボー株式会社本社
ご協力いただいた方々に重ねて御礼申し上げます。
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by atlia | 2014-11-03 11:16 | 企画展