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アートさんぽ[染のみち-藍染の工房を訪ねる]を開催しました。
10月12日(日)、開催中の〈川口の匠vol.4 麗のとき〉企画展関連イベント、アートさんぽ[染のみち-藍染の工房を訪ねる]を開催しました。川口市の染色の歴史を伝える匠の工房をバスで周りました。
講師は染め師の西耕三郎さん。染色を始めて70年経ちますが、留まることなく常に新しい技術などを日々考え、川口の芸術文化の発展に深く関わっています。
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まずは予習を兼ねて展覧会を鑑賞。藍染師の田中昭夫さんのコーナーで、展示されている反物や道具などについて触れた後、いよいよ出発です。

最初の目的地は、川口市内にある工房「西染色工房」です。耕三郎さんに工房と息子である大三さんの工房の2棟を、2つのグループに分かれて見学しました。

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耕三郎さんの工房では、出刃ベラという道具の糊付けの実演を見学しました。糊付けとは、染める時に白く残したいところにもち米と米ぬかからつくられた小紋糊を塗る作業です。この糊は熱い藍甕の中でも溶けずに残るようにつくられています。また、糊などの材料は耕三郎さんも田中昭夫さんも使っているものは違うそうで、それぞれの好みや使いやすさでつくり方が分かれます。
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実演の後、染色に使う様々な型を見せてくださいました。江戸時代の型もあり、その種類は豊富!画像は格子柄の型。これは西耕三郎さんの手彫りなのです!そのため、ところどころ線が曲がっている箇所がありますが、それもまた良い味わいですね。
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大三さんの工房では染色体験。参加者自らが筆と耐水性の染色専用の型紙を使って染めていきます。
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初めは少しずつ、一つひとつ型をバラバラに使っていた参加者でしたが、慣れてくると上から色を重ねたり色の濃淡を変えるなど、様々な表現方法を編み出しました。普段はなかなかできない体験、自分の手によりカラフルに染められていく布を見て、「楽しい!」という声も聞こえてきました。

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終了の時間が迫ると、もっとやりたいと名残惜しそうにする参加者も。自分で染めた作品をお土産にいただき、みなさん嬉しそうな笑顔で工房を後にしました。

次の目的地は、藍染師の田中昭夫さんの工房「紺定」。田中さんは天然の藍だけを使って染色する「正藍型染」を行っています。ここでは、田中さんの「長板中型」と藍染の実演を見学しました。

まずは「長板中型」の実演。「長板中型」とは、大紋と小紋の中間の大きさの模様を彫った型と長板を使って染色する技法です。今回見学したのは染める前の布の下処理です。馬と呼ばれる台の上に長板を乗せて行います。
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薄く糊を塗った長板を水で湿らせて布を張り、地張り木(じばりぎ)という道具で伸ばしていきます。田中さんは力を込めてしっかり貼り付けていました。その後、田中さんの工房の屋号を糊付けします。
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次に藍染の実演です。田中さんの工房には4つの藍甕があり、その中心には藍を温める穴が開いています。天然の藍は一定の温度を保たなければならず、冬は火を炊いて毎日温め続けます。
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藍に10分浸けたら10分引き上げる、という動きを6回を目安に繰り返します。それ以上行うと糊が溶けて、白いまま残そうとしたところも染まってしまうのです。
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藍甕から引き上げたばかりの染物は黒っぽい印象ですが、空気に触れて酸化することで藍の色が出てきます。天然の藍であるために含まれている不純物を洗い流すと、更に澄んだ色になります。

最後の目的地は江戸袋氷川神社です。この日は丁度秋の舞(本祭)が行われていました。普段はあまりじっくり見ることの少ない獅子舞を、この機会に見学しました。雌獅子、中獅子、雄獅子の3頭の獅子が拝殿の板の間を踏みならして舞うことから、「バッタバッタ獅子舞」とも呼ばれています。
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力強い舞に、参加者も見入っていました。

今回のアートさんぽでは、貴重な資料や目の前で行われる作業に目を奪われ、積極的に質問をする参加者が多く見られました。見るだけでなく体験を通して、川口の文化をより身近に感じることができたのではないでしょうか。
田中さんの工房の様子は、現在開催中の企画展〈川口の匠vol.4 麗のとき〉の会場内、映像コーナーでご覧いただけます。会期は11月16日(日)までです。みなさまのご来場、お待ちしております。

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by atlia | 2014-10-12 19:26 | 企画展