今年度は[補正作業 ―新しい「世界」のみつけ方]と題し、土屋貴哉さんと市立元郷中学校2年生が一緒に活動中!授業は9月中旬から11月中旬まで!
今回は1回目のレポートとして、初日のオリエンテーション&翌週の宿題発表の様子をお伝えします。
まずはオリエンテーション。
土屋さんはスライド資料を用意し、自己紹介をしつつ、今回の授業の内容と目的を説明しました。
やはり生徒たちも最初は緊張気味。土屋さんの作品のスライドをみて、こっそり小声で「すごっ」「何これ」とささやきます。
土屋さんはいくつかのスライドを見せ、「これはなんでしょう?」と聞いてみます。生徒たちの手も挙がり始めました。
ある生徒が「りんご!」、またある生徒が「切ったりんご?」と答えると、「どこからそう思った?」「なんで?」と質問返し。
あれ、当然りんごだと思ったのに。「かたちがそうだし…?」「実は梨とか?」など憶測が飛び交います。
でもやっぱり、色やかたちはりんご。写真ではあるにせよ、どう見たってりんごです。
そして土屋さんも「正解は…どっちも正解です!」あれ、やっぱりりんごなんじゃないか。
「人は『当然そうだ』と思って、物事を見ている」と土屋さん。だからそれを少し揺るがされると戸惑ってしまう。
世の中には「ルール」があります。それは法律や規則だったり、自然法則だったり、あるいは常識や思い込みだったり。
しかし、人それぞれの違いもありますよね。自分が知っているルールが「当然」だと思っていることで、人や国同士の対立だって起こるのです。
りんごの写真を「当然『りんご』だ」と思わない人だっているかも。あるいは、ここで答えをわざと間違えた方が面白いことが起こるかもと空気を読む人もいる。
ふむ、なるほど、そう言われれば。ちょっと難しいけれど、なんとなく納得顔の生徒たち。
では、ルールがどんなものかなんとなくわかったこところで、それを考え直すにはどうしたら良いか?
それは、「ルールから少し外れている」を明るみに出す、ということ。この授業では、そういう物事を「変」と定義しました。
土屋さんの作品も、ある意味では「変」を意図的に作り出したものです。普段は上下・左右を動かすために2本だけ画面に存在するパソコンのスクロールバーが無限にあり、しかも勝手に動くもの。消しゴムを鉛筆で綺麗に塗りつぶし、その機能を逆転・消滅させたもの。
そうか、最初に感じた「違和感」は「変」だったからか。生徒たちの頭の中も整理されてきました。
意図的か?トラブルか?ちょっといつもの「ルール」からはみ出すだけで、こんなにも人々の想像力を掻き立てるとは思いもよりませんでした。
しかも、これらはいつもなら見落としがち。それこそ「当然」のように街中に存在しているのです。
そこで、初日の宿題は「自分の身近なところに『変』を見つけてくること」。生徒たちにはレポート用紙が配られました。
いつもの生活エリアを見直して「変」を見つけてみることで、まずは細かな物事に目を配る姿勢を身につけようというのです。
翌週は、その宿題を発表する時間。
生徒たちはレポート用紙にそれぞれ見つけてきた「変」をまとめ、イラストや写真をつけたものを一人ひとり前に出て報告しました。
報告に挙がったのは、むやみに高い場所に設置されたドア、本物のトケイソウよりそれらしくまさに時計に草がついたデザインの壁掛け時計、キャラクターのような顔のかたちに刈り込まれた植木など。
見つけた場所はどこか、何をきっかけに見つけたのか。土屋さんも積極的に質問します。
家の中、近所の公園、ちょっと離れた駅前、昔の旅行の記憶。それぞれの経験の中に「変」が見つけられました。
聞いている人たちも、ただ聞いているだけではありません。その「変」がどんな印象のものか、分析シートに書き込んでいきます。
日常の中には思ったより「変」が存在していること、実感としてよくわかった様子。そして、それらは色々な個性を持っていることも見えてきました。
「変」を見つける体験をしたことで、お話を聞くよりもっと深く「変」を理解しつつある生徒たち。
次回からは、見つけるだけでなく、実際に自分たちで「『変』をつくる」ことに挑戦します!
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No.0 授業がはじまりました