谷本さんは美術大学に在籍していた際、粘土・木材など様々な素材をつかった立体作品やインスタレーションを制作していました。しかし自分の手で制作すると思い通りのかたちにしかならないことに、どこか不自由さを感じていたと言います。
そんな学校生活の中で、ふいに「粘土を地面に落としてみたらどんなかたちになるだろう?」と思いつきます。早速粘土を買ってきてウサギのかたちをつくり床に向かって落としてみると、ウサギは横に寝そべるような状態でつぶれてしまいました。そのかたちは「なんとも情けないのだけれど、今まで見たことのない、面白くて良いかたちだった」と谷本さんは振り返ります。しかも粘土が床に叩きつけられる音やその動作自体がとても心地よく、以降の作品でも「素材から得られる心地よさ」を大切にして制作をするようになりました。
滑り台や輪くぐりなどの装置をつかって粘土に偶然の力を加えることで、元のかたちを変形させたインスタレーション。タイトルの通り、谷本さんが粘土をつかって色々な遊び方をした様子が想像できます。このような「一人遊び」の痕跡を提示するような作品をいくつか発表するうち、「他の誰かが作品を触れば、もっと予想外のかたちが生まれるのではないか」と考えるようになったそうです。
そしてそのアイデアを試すように、作品の一部が自然に壊れたり鑑賞者に触られたりすることを期待してこの作品を展示しました。しかし1週間ほどの期間の中で作品に触れようとする鑑賞者は少なく、思ったほど作品が変化することはなかったようです。「いつかは鑑賞者に『つくられる』展示をしてみたい」と思いながら、その後もアイデアを温め続けていたのだとか。
その変化を見て谷本さんは
「全てを許容することに戸惑う気持ちも多いけれど、絶対に自分では思いつかないような面白いこともたくさん起こっている。自分の作品の中に人が集まり、作品の一部になっている状況を見るのもすごく新鮮だった。」
と率直な感想を語りました。
谷本さんの作品は、会期中にアトリアに来たみなさんが参加することで予測不可能に変化してきました。このイベントも、8月26日(火)・27(水)の残り2日間となりました。多くの方に、谷本さんが感じている「素材の心地よさ」や「かたちの面白さ」を実感していただけると嬉しいです。
みなさまのお越しを、スタッフ一同心よりお待ちしております。
http://www.atlia.jp/exhibition/