
今回の講師は画家・絵画研究家であり、愛知県立芸術大学名誉教授である小林英樹さん。
数々の名画を残したフィンセント・ファン・ゴッホの特に造形について、お話しいただきました。
まずは、ゴッホの製作がはじまる流れをふり返るところからです。ゴッホは故郷、オランダで絵を描き始めました。当時のゴッホの絵画はモノトーンが大半で、貧しい人々、厳しい自然をありのまま描くことで、「上辺」の美しさではなく、内側から滲み出てくる真実を描きたかったのです。

後にゴッホはパリへ移り住みますが、そこでは印象派が流行していました。明るい色彩が特徴の絵画ですが、ゴッホにとっては上辺の美しさでしかないと感じられ、受け入れられるものではありませんでした。
しかしゴッホは、印象派の絵画を描けなければ新しい絵画を描くことができないと気付き、自分でアレンジして習得しようと試みました。その結果、色彩は明るくなりましたが、今まで培ってきた多くのものを封じ込めてしまうことになりました。

また、ゴッホの絵画は浮世絵から多くの影響を受けたといいます。パリからアルルへ移り住んだ頃、南仏の鮮やかな色彩・浮世絵の平面的な表現が融合し、多くの名画が誕生したのです。

ゴッホの代表作である《14輪の向日葵》(1888年夏、ロンドン・ナショナルギャラリー)は、花瓶が縁どられています。今までの西洋の絵画では描かれてこなかったものです。また、ひまわりの花の影も描かれていません。これは、浮世絵の影響を受けた結果なのです。
参加者はプロジェクターで映された作品画像などを真剣に見つめ、お話に聞き入っていました。ゴッホのあまり知られていない絵画も紹介され、新たな魅力を発見できる講座になりました。