講師は、仏像を分かりやすく解説することで人気が高い仏像コラムニストの宮澤やすみさん。
今回は、各寺院で大切に受け継がれてきた仏像を美術的観点から鑑賞し、それらを通して地域の歴史や文化も知っていただくことを目的として開催しました。
今回は鳩ヶ谷にある「法性寺」→「地蔵院」→「真福寺」をめぐりました。
まず「法性寺」のお堂では、ご住職の飯田洪一さんからお寺の宗派やこれまでの歴史的な歩みについてお話いただいた後、蓮弁の脱落が多かったため仏師に修理を依頼したところ胎内より仏像3体が発見された(平成13年)という御本尊《釈迦牟尼仏》や、穏やかなお顔の《大日如来》などを拝観しました。
そして鋭い彫りが印象的な《円空仏系》(作者不明)なども別部屋に移動して拝観し、造形的な特徴を鑑賞しながら仏像が歩んできたであろう道のりに想いをめぐらせました。
次の「地蔵院」までは日光御成街道(鳩ヶ谷宿)と並行している鎌倉街道の一部を通って歩いて移動。
地蔵院のお堂では《木造不動明王立像》を拝観しながら、髪型や剣を振り上げるポーズが特徴的であること、肉付きが伊豆・願成就院の像(運慶作)に近く慶派の正統を感じる造型であることなどの説明が講師からありました。
ご住職の小室雄充さんからは鳩ヶ谷の歴史についてや、地蔵院にお墓がある不二道(富士信仰)の開祖・小谷三志についての説明があり、地域の歴史や偉人についての知識も深めることができました。
参加者は境内にある迫力満点のタブノキからパワーをもらい、地蔵院を後にしました。
そしてバスに乗り込み、本日最後のお寺「真福寺」へ移動。
真福寺では、天部像と神仏習合についてのお話が講師からありました。
インド由来の悪鬼が仏教世界に取り入れられて神となり、日本では神道と習合して独自の解釈で奇怪な神像が造られるようになっていったことなど、仏像の発展についても触れました。
お堂では、商売繁盛の神・恵比寿神(神道系の神)と福の神・大黒天が一体になった神像《恵比寿大黒》、善悪両面をもつ神の代表格である《歓喜天像》、さかのぼる炎の前に力強く立つ《不動明王立像》などを拝観しました。
ご住職の元山公寿さんには、分かりやすい例を交えて「曼荼羅図」を解説いただき仏の境地や世界観について学ぶことができました。
このアートさんぽを通して、各寺院の長き歴史と伝統を肌で感じながら、仏像を鑑賞する楽しさを感じていただけたのではないかと思います。
こうした身近な地域にある誇るべき文化を、これからも大切にしていきたいものです。