講師は保坂健二朗さん(東京国立近代美術館主任研究員)。
保坂さんは、建築に関することが専門ではないものの鑑賞者に近い視点から企画がやってみたいと考えていると言い、これまでに手掛けられてきた企画展についてのお話・そこで実際に展示された建築家に関するお話からスタート。
たくさん登場する建築家の名前がキーワード。
現代の建築家が大きく影響を受けている近代の建築家として、第1回「江戸東京×建築」でも登場した前川國男・坂倉準三、吉阪隆正などル・コルビュジェから学んだ建築家、またフランク・ロイド・ライトやアントニン・レーモンドなどの作例を紹介。
ル・コルビュジェの国立西洋美術館の向かいに建つ東京文化会館は前川國男の設計であるといった師弟の不思議なめぐり合わせの建築物は、今でもご覧いただけますね。
戦後の建築のはじまりを学んだ後は、丹下健三・磯崎新・篠原一男など、今まさに注目が高まっている現代の建築に影響を与えた建築家の作例も登場しました。
ユニットを加減できるなど拡張する社会に有機的に対応する「メタボリズム」といった建築家たちの動きも紹介され、菊竹清訓・槇文彦なども、このあたりのキーワード。
その槇文彦が命名したという「野武士たち」と言われる建築家たちは、安藤忠雄・伊藤豊雄など、現在でも第1線で活躍する建築家たち。
注目の若手建築家だった彼らの作例はその当時ほとんどが個人住宅。
長谷川逸子・石山修武の作例は、なんと川口にもあるようです。
もちろん個人住宅はすぐに覗けるものではありませんが、近くにあると思うとなんとなく身近に感じられるもの。
日本の建築家は著名になっても個人住宅や小さな建築物の設計を続けていく人が多い、と保坂さん。
これまでの建築家を「赤派/白派」として概観している藤森照信の論も紹介。
素材感がある「赤派」には磯崎新・石山修武・そして藤森さん本人も。抽象的な印象の「白派」には槇文彦・ミース・ファン・デル・ローエなどが挙げられています。
面白いのはその両方の特徴がみられる「桃色派」。今回の講座では、安藤忠雄・伊藤豊雄がここに挙げられました。
最後には、最近川口でも注目が集まっている伊藤豊雄さんの設計である斎場なども紹介され、近代の建築から現在設計中である建築まで、大きな流れを概観していただきました。
ぎゅっとつまった内容を丁寧に説明いただいた保坂さん、参加者の皆さまの顔を何度も振り返りながらお話してくれました。
参加者の皆さまも、メモを取りながら真剣な面持ちで聞いてくださり、嬉しい限り。
アトリアで建築に関する企画は初めての試み、全2回の開催でスタッフもたくさん勉強させていただきました!
お越しいただいた皆さま、ありがとうございました。