ATLIA STAFF BLOG
「日本画を伝える-保存と修理」を開催しました。

924日(日)、日本画の魅力や楽しみ方を学ぶ講座シリーズ「日本画ウィーク」第三弾として「やさしい鑑賞講座」を開催しました。講師は文化財保存技術者の鈴木晴彦さん。


日本画の「保存修理」と聞くと、絵具の剥離や本紙が破れた作品など破損してしまった作品を直すイメージがあるかもしれません。しかし実際には、前もって劣化や破損を防ぐための予防を講じておくことが重要。鈴木さんは作品が経年変化していく過程、劣化と損傷について身近な日用品を例にお話しました。


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手がけた修理の実例をいくつかスライドでご紹介いただきました。巻いた状態で保存していた掛軸の部品がいつの間にか腐食してしまい、布部分を突き抜けて画面にまで影響を及ぼしてしまった例も。大きな破損でしたが、原因に対処した修理後はほぼ元通りの姿になりました。

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さらに市が所蔵する作品2点について、鈴木さんに保存状態を見ていただきました。透過光を用いて絵具の状態を調べたり、裏打紙の継ぎ目を確かめたり、実物を使ってその場で行う点検作業は臨場感たっぷりでした。


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作業に使う材料・道具の数々を目の前で見せていただくこともできました。紙を伸ばす・糊をつけるなど工程によって使い分けられる刷毛や、紙を切るために丸い形をした包丁など、普段見る機会が少ないものばかり。参加者は興味津々といった様子で解説に耳を傾けていました。

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締め括りに、東日本大震災で被災してしまった文化財のレスキュー活動について紹介していただきました。適切な作業場所も十分な人員も確保しにくい状況下で、地域の宝を守るべく奮闘する技術者たちの熱意が伝わってきました。


鈴木さんのお話の中で特に印象的だったのは「作品の今の状態だけでなく、過去にどのように扱われてきたものなのか・これからどう活用し保存していくのかを考えなくてはいけない」という言葉。今ある作品は過去の誰かから引き継いだものであり、今を生きる私たちが未来へと伝えていく必要があるのだと感じさせる2時間になりました。


本講座がみなさまにとって「作品を伝えること」について考えるきっかけとなれば幸いです。


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# by atlia | 2017-10-01 10:14 | 鑑賞講座・実技講座
AIS12:vol.0 発信!コミュニケーション・ペインターズ はじまるよ!
毎年秋、アトリアでは恒例となっています「アーティスト・イン・スクール」は今年度で12回目をむかえます!
第一線で活躍するアーティストが図工・美術の授業で先生(講師)をつとめるこのプログラムは、毎年1校1学年、川口市内の小中学校を対象として開催。
第2学期の一部である1か月半ほど、何回かの授業を経て、ともに作品を制作しつつ交流をもつことで、
児童生徒はもちろん、アーティスト・学校の先生にとっても、想像力・創造力・コミュニケーション力を刺激し合い、学び合う機会とすることを目的としています。

今年度は講師にミヤザキケンスケさん(ペインター)をむかえ、川口市立東本郷小学校6年生と一緒に図工の授業を行います。
カラフルに世界を描きだすミヤザキさんの表現に触れながら、今までにない壁画のような作品に挑戦!
本ブログでは、授業をご一緒するコーディネイターである当館スタッフの目線で授業をレポート、随時みなさまにお伝えします。

2学期はじまって少し落ち着き始めたこの頃、そろそろ1回目の授業!
今回は予告として、講師のミヤザキさんと、東本郷小学校について、ちょっとご紹介します。

ミヤザキケンスケさんは、トータルペインターとして壁画制作やワークショップのコーディネイトをしてきたアーティスト。
Super Happyをテーマに、ぱっと見ただけで人が幸せになれるような、色鮮やかな作品を数々生み出してきました。
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※1

近年では「OVER THE WALL」というプロジェクトを主宰、世界中に現地の人たちと一緒に描いた壁画を残す活動を推進中。
東ティモール、ウクライナなど、発展途上国や難民の多い地域などに自ら出向き、まさに世界を明るくするために絵を描いてきたのです。
ミヤザキさんの作品に繰り返し登場するモチーフであるお花はとってもカラフル、ぱっとひかる明るい笑顔に似ています。

現地の人と一緒に描くという姿勢は、大きな作品をつくること、さらにその土地に寄り添うためにも必要な要素だと考えているミヤザキさん。
今回のアーティスト・イン・スクールでは、東本郷小学校の6年生が過ごしてきた時間に、どう寄り添っていくでしょうか。
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※2

その東本郷小学校6年生は、学年が1クラスしかない、超がつく仲良し学級。
学年目標を「ちいむ(知恵・生き方・無我夢中の頭文字)」として、その決めポーズまで揃っちゃうのです。
「ちいむ」は5年生からずっと掲げている、いわばスローガンのようなもの。今年は2年目なので「ちいむセカンド」とするときも。
そこで今回はサブタイトルを「おっきく描こうぜ!ちいむ:ぼくらの絵」と付けました。
全33人の小規模学級、まさに「チーム」な一体感をもって、1枚の大きな絵に挑戦。
自分たちのこと、過ごしてきた6年間、そして東本郷小学校の魅力、を伝えるための「コミュニケーション・ペインティング」!
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※3

どんな交流と作品とが生まれるのか、今からとっても楽しみ。
この授業で制作した作品は、その記録資料とともに、アトリアで成果発表展として公開します。
本ブログでの授業レポートとともに、どうぞお楽しみに。


※1 ミヤザキケンスケ作品《Whale's tale》2016
※2 壁画制作中のミヤザキさん
※3 東本郷小学校外観

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第12回アーティスト・イン・スクール
発信!コミュニケーション・ペインターズ ―おっきく描こうぜ!ちいむ:ぼくらの絵
ミヤザキケンスケ×川口市立東本郷小学校6年生33人 
成果発表展@川口市立アートギャラリー・アトリア
2017年11月11日(土)~12月10日(日) 
10:00~18:00(土曜日のみ20:00まで開館)
観覧無料
※関連展示として講師作品展〈カラフル・ザ・ワールド!〉を先行公開 10月28日(土)~
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# by atlia | 2017-09-27 17:43 | 学校×アトリア
日本画ウィーク第二弾:たのしい実技講座[日本画を描く]を開催しました
日本画の魅力や愉しみ方を学ぶ講座シリーズ「日本画ウィーク」。第二弾は9月16日(土)、たのしい実技講座[日本画を描く]と題し、作品制作を体験しながら日本画の基礎を学びました。講師は前回に引き続き今西彩子さん(鎌倉市鏑木清方記念美術館 学芸員)、ほか鏑木清方記念美術館のサポートメンバーである寺澤さん、三澤さん、津久井さんにも実技指導していただきました。
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制作を始める前に今西さんから日本画の絵具について解説を受けました。日本で古くから使われている「岩絵具(いわえのぐ)」は孔雀石(くじゃくいし:マライカイト)や藍銅鉱(らんどうこう:アズライト)などの言わば宝石を原料にしたもの。各地の土を精製してつくられていた「水干絵具(すいひえのぐ)」は後に色鮮やかなものが開発されたそうで、これらに動物の皮や骨からとった「膠(にかわ)」を接着剤として加え、練り混ぜてから水で溶いてようやく1色が使えます。棒状に固められた「三千本膠(さんぜんぼんにかわ)」は残念ながら職人が少なくなり、材料全ての貴重さが増しているのだとか。

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使う絵具の11つを画家の手で調合する日本画の制作には非常に手間と時間がかかりますが、今回主に使う「顔彩(がんさい)」は、湿らせた筆で表面を撫でれば使える固形絵具。色を濁らせることなく仕上げるには描きたい絵の全体をイメージして薄い色から順に塗っていくこと、太いものから細いものまで筆をうまく使い分けるコツなどが寺澤さんより伝えられました。

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描くための基礎知識を得たところで作品の下絵に取り掛かります。参加者各自が用意してきた図案は身の回りの草花をスケッチしたものから動物図鑑のページまで様々。色紙への描き写し方、より良い構図のとり方などについて三澤さんや津久井さんにアドバイスを受け、鉛筆で輪郭線を描いていきました。

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そしていよいよ彩色に入ります。各机に置かれた顔彩は赤系統だけでも10種類近くあり選ぶのに迷うほど!それぞれの色を確かめ、あるいは混色し、その違いやにじみなどを楽しみながら多彩に塗り分けていきました。
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彩色に慣れてきたら試しに1色、岩絵具または水干絵具を使ってみます。絵具皿に粉状の絵具を入れ、溶かした膠と水を少量ずつ加えて人差し指と中指で練り混ぜました。日本画ならではの体験に神経を集中しつつも初めての感触に思わず笑みがこぼれます。
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そしてできた色を作品に加えてみます。岩絵具は顔彩と同じ調子で筆を走らせると色が伸びずにかすれてしまうのですが、そこが何とも言えず良い味わい。「きれいだなぁ」と、何度もつぶやく参加者の声が聞こえました。
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彩色を終えた参加者は作品の余白に砂子(すなご:金色の箔を細かい粉にしたもの)をまきました。不規則に舞い散る光の粒が朝露や流れる風を思わせ、描いた絵を引き立てます。
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そして最後に全員の作品を並べて鑑賞会。津久井さんが11人の作品に見られる良さや工夫についてコメントし、その成果を称える拍手が上がりました。参加者からは

「日本画はよく観に行きますが描くのは初めてでとても難しかったです。」

「奥深さと難しさ、楽しさを学ぶことができました。」

との感想をいただきました。じっくりと手をかけ生み出す日本画の彩りの豊かさを体感できたのではないでしょうか。


このシリーズに関する過去の記事はこちら
日本画ウィーク第一弾:日本画ウィーク第一弾:やさしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]を開催しました
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# by atlia | 2017-09-17 12:00 | 鑑賞講座・実技講座
〈第7回 公募 新鋭作家展〉の優秀者が決定いたしました!
〈新鋭作家展〉は文化芸術の振興と新鋭作家の発掘・育成を目的とした公募展です。ポートフォリオ審査・プレゼンテーション展示審査にて優秀者を選出し、1年後に展覧会を行います。

第7回目となる〈公募 新鋭作家展〉の二次審査が終了し、2名(組)の優秀者が決定いたしました。

来年度に展示される2名(組)の新鋭作家による展示にご期待ください。
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# by atlia | 2017-09-15 10:01
日本画ウィーク第一弾:やさしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]を開催しました
9月の第3~4週にかけて「日本画ウィーク」を開催しました。日本画を見たり描いたりしながらその魅力や愉しみ方を学ぶ初心者向けの講座シリーズです。
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第一弾は13日(水)、たのしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]と題し、講師の今西彩子さん(鎌倉市鏑木清方記念美術館 学芸員)に日本画の特徴や鏑木清方をはじめとする近代の画家・作品ついてお話しいただきました。
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この日を楽しみにお越しくださった会場いっぱいの参加者に向けて、まずは日本画の歴史について解説。古代~中世、日本の絵画は人々の住居や暮らしの変化とともに発展していきました。日常生活と仕事を区別するためのいくつもの部屋がつくられ、室町時代に建てられた武家屋敷の障壁画では、多くの人が集まる広間にはたおやかな「大和絵」、武士の居室には勇壮な「唐絵」が好まれたのだそうです。近世には様々な画風をもつ流派が生まれていき、たっぷりとした余白が特徴の「狩野派」、一色の絵具が乾かないうちにもう一色をにじませる「垂らし込み」の技法を用いた「琳派」などがその代表格。明治以後普及していった西洋画と区別するため伝統的な日本の絵画を「日本画」と呼ぶようになったのだとか。
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鏑木清方は変化の激しい明治~昭和の時代を生きた画家です。東京神田に生まれ、新聞などの挿絵画家として画業をスタートしましたがのちに日本画家へと転身。庶民の暮らしや文学などを題材にした優美な女性像を多く描きました。川口市が所蔵する《墨田川両岸 梅若塚・今戸》(2008年市内で鋳物業を営む田原家より寄贈)は歌舞伎などで有名な梅若丸伝説に因んだもの。背景によく目をこらすと、水面を泳ぐゆりかもめや当時盛んだった「今土焼」など、江戸の風物が描き込まれています。
清方の人柄を伝える資料として、生前録られた音声や動画も紹介されました。当時はまだ珍しかったムービーフィルムを使って自ら撮影や上映会を行うほど新しもの好きだったそうですが、その肉声でしみじみと語られるのは江戸の風情を残し「感受性豊かだった」明治の庶民生活への愛着。市井の人を描く動機を示すエピソードに参加者たちは興味深そうに聞き入っていました。

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最後に川口市の所蔵作品から横山大観や前田青邨、川合玉堂など、清方と同時代を生きた日本画家たちの作品が紹介されました。身近な風景や動植物を題材にしつつ、ひろい余白や絵具の垂らし込みなどに伝統から学んだ美が生きています。
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会場には今回だけ特別に、奥村土牛の作品(実物)を展示していました。これからの季節にぴったりな《柿》。講座の後に鑑賞すればより描き方の特徴が見え、風情も感じられます。普段はどこか遠くに感じがちな「日本画」ですが、人の暮らしとの結びつきを知ることでぐっと身近に親しむ機会となりました。

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# by atlia | 2017-09-14 12:00 | 鑑賞講座・実技講座



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