ATLIA STAFF BLOG
カテゴリ:鑑賞講座・実技講座( 30 )
「日本画を伝える-保存と修理」を開催しました。

924日(日)、日本画の魅力や楽しみ方を学ぶ講座シリーズ「日本画ウィーク」第三弾として「やさしい鑑賞講座」を開催しました。講師は文化財保存技術者の鈴木晴彦さん。


日本画の「保存修理」と聞くと、絵具の剥離や本紙が破れた作品など破損してしまった作品を直すイメージがあるかもしれません。しかし実際には、前もって劣化や破損を防ぐための予防を講じておくことが重要。鈴木さんは作品が経年変化していく過程、劣化と損傷について身近な日用品を例にお話しました。


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手がけた修理の実例をいくつかスライドでご紹介いただきました。巻いた状態で保存していた掛軸の部品がいつの間にか腐食してしまい、布部分を突き抜けて画面にまで影響を及ぼしてしまった例も。大きな破損でしたが、原因に対処した修理後はほぼ元通りの姿になりました。

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さらに市が所蔵する作品2点について、鈴木さんに保存状態を見ていただきました。透過光を用いて絵具の状態を調べたり、裏打紙の継ぎ目を確かめたり、実物を使ってその場で行う点検作業は臨場感たっぷりでした。


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作業に使う材料・道具の数々を目の前で見せていただくこともできました。紙を伸ばす・糊をつけるなど工程によって使い分けられる刷毛や、紙を切るために丸い形をした包丁など、普段見る機会が少ないものばかり。参加者は興味津々といった様子で解説に耳を傾けていました。

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締め括りに、東日本大震災で被災してしまった文化財のレスキュー活動について紹介していただきました。適切な作業場所も十分な人員も確保しにくい状況下で、地域の宝を守るべく奮闘する技術者たちの熱意が伝わってきました。


鈴木さんのお話の中で特に印象的だったのは「作品の今の状態だけでなく、過去にどのように扱われてきたものなのか・これからどう活用し保存していくのかを考えなくてはいけない」という言葉。今ある作品は過去の誰かから引き継いだものであり、今を生きる私たちが未来へと伝えていく必要があるのだと感じさせる2時間になりました。


本講座がみなさまにとって「作品を伝えること」について考えるきっかけとなれば幸いです。


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by atlia | 2017-10-01 10:14 | 鑑賞講座・実技講座
日本画ウィーク第二弾:たのしい実技講座[日本画を描く]を開催しました
日本画の魅力や愉しみ方を学ぶ講座シリーズ「日本画ウィーク」。第二弾は9月16日(土)、たのしい実技講座[日本画を描く]と題し、作品制作を体験しながら日本画の基礎を学びました。講師は前回に引き続き今西彩子さん(鎌倉市鏑木清方記念美術館 学芸員)、ほか鏑木清方記念美術館のサポートメンバーである寺澤さん、三澤さん、津久井さんにも実技指導していただきました。
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制作を始める前に今西さんから日本画の絵具について解説を受けました。日本で古くから使われている「岩絵具(いわえのぐ)」は孔雀石(くじゃくいし:マライカイト)や藍銅鉱(らんどうこう:アズライト)などの言わば宝石を原料にしたもの。各地の土を精製してつくられていた「水干絵具(すいひえのぐ)」は後に色鮮やかなものが開発されたそうで、これらに動物の皮や骨からとった「膠(にかわ)」を接着剤として加え、練り混ぜてから水で溶いてようやく1色が使えます。棒状に固められた「三千本膠(さんぜんぼんにかわ)」は残念ながら職人が少なくなり、材料全ての貴重さが増しているのだとか。

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使う絵具の11つを画家の手で調合する日本画の制作には非常に手間と時間がかかりますが、今回主に使う「顔彩(がんさい)」は、湿らせた筆で表面を撫でれば使える固形絵具。色を濁らせることなく仕上げるには描きたい絵の全体をイメージして薄い色から順に塗っていくこと、太いものから細いものまで筆をうまく使い分けるコツなどが寺澤さんより伝えられました。

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描くための基礎知識を得たところで作品の下絵に取り掛かります。参加者各自が用意してきた図案は身の回りの草花をスケッチしたものから動物図鑑のページまで様々。色紙への描き写し方、より良い構図のとり方などについて三澤さんや津久井さんにアドバイスを受け、鉛筆で輪郭線を描いていきました。

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そしていよいよ彩色に入ります。各机に置かれた顔彩は赤系統だけでも10種類近くあり選ぶのに迷うほど!それぞれの色を確かめ、あるいは混色し、その違いやにじみなどを楽しみながら多彩に塗り分けていきました。
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彩色に慣れてきたら試しに1色、岩絵具または水干絵具を使ってみます。絵具皿に粉状の絵具を入れ、溶かした膠と水を少量ずつ加えて人差し指と中指で練り混ぜました。日本画ならではの体験に神経を集中しつつも初めての感触に思わず笑みがこぼれます。
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そしてできた色を作品に加えてみます。岩絵具は顔彩と同じ調子で筆を走らせると色が伸びずにかすれてしまうのですが、そこが何とも言えず良い味わい。「きれいだなぁ」と、何度もつぶやく参加者の声が聞こえました。
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彩色を終えた参加者は作品の余白に砂子(すなご:金色の箔を細かい粉にしたもの)をまきました。不規則に舞い散る光の粒が朝露や流れる風を思わせ、描いた絵を引き立てます。
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そして最後に全員の作品を並べて鑑賞会。津久井さんが11人の作品に見られる良さや工夫についてコメントし、その成果を称える拍手が上がりました。参加者からは

「日本画はよく観に行きますが描くのは初めてでとても難しかったです。」

「奥深さと難しさ、楽しさを学ぶことができました。」

との感想をいただきました。じっくりと手をかけ生み出す日本画の彩りの豊かさを体感できたのではないでしょうか。


このシリーズに関する過去の記事はこちら
日本画ウィーク第一弾:日本画ウィーク第一弾:やさしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]を開催しました
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by atlia | 2017-09-17 12:00 | 鑑賞講座・実技講座
日本画ウィーク第一弾:やさしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]を開催しました
9月の第3~4週にかけて「日本画ウィーク」を開催しました。日本画を見たり描いたりしながらその魅力や愉しみ方を学ぶ初心者向けの講座シリーズです。
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第一弾は13日(水)、たのしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]と題し、講師の今西彩子さん(鎌倉市鏑木清方記念美術館 学芸員)に日本画の特徴や鏑木清方をはじめとする近代の画家・作品ついてお話しいただきました。
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この日を楽しみにお越しくださった会場いっぱいの参加者に向けて、まずは日本画の歴史について解説。古代~中世、日本の絵画は人々の住居や暮らしの変化とともに発展していきました。日常生活と仕事を区別するためのいくつもの部屋がつくられ、室町時代に建てられた武家屋敷の障壁画では、多くの人が集まる広間にはたおやかな「大和絵」、武士の居室には勇壮な「唐絵」が好まれたのだそうです。近世には様々な画風をもつ流派が生まれていき、たっぷりとした余白が特徴の「狩野派」、一色の絵具が乾かないうちにもう一色をにじませる「垂らし込み」の技法を用いた「琳派」などがその代表格。明治以後普及していった西洋画と区別するため伝統的な日本の絵画を「日本画」と呼ぶようになったのだとか。
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鏑木清方は変化の激しい明治~昭和の時代を生きた画家です。東京神田に生まれ、新聞などの挿絵画家として画業をスタートしましたがのちに日本画家へと転身。庶民の暮らしや文学などを題材にした優美な女性像を多く描きました。川口市が所蔵する《墨田川両岸 梅若塚・今戸》(2008年市内で鋳物業を営む田原家より寄贈)は歌舞伎などで有名な梅若丸伝説に因んだもの。背景によく目をこらすと、水面を泳ぐゆりかもめや当時盛んだった「今土焼」など、江戸の風物が描き込まれています。
清方の人柄を伝える資料として、生前録られた音声や動画も紹介されました。当時はまだ珍しかったムービーフィルムを使って自ら撮影や上映会を行うほど新しもの好きだったそうですが、その肉声でしみじみと語られるのは江戸の風情を残し「感受性豊かだった」明治の庶民生活への愛着。市井の人を描く動機を示すエピソードに参加者たちは興味深そうに聞き入っていました。

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最後に川口市の所蔵作品から横山大観や前田青邨、川合玉堂など、清方と同時代を生きた日本画家たちの作品が紹介されました。身近な風景や動植物を題材にしつつ、ひろい余白や絵具の垂らし込みなどに伝統から学んだ美が生きています。
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会場には今回だけ特別に、奥村土牛の作品(実物)を展示していました。これからの季節にぴったりな《柿》。講座の後に鑑賞すればより描き方の特徴が見え、風情も感じられます。普段はどこか遠くに感じがちな「日本画」ですが、人の暮らしとの結びつきを知ることでぐっと身近に親しむ機会となりました。

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by atlia | 2017-09-14 12:00 | 鑑賞講座・実技講座
たのしい実技講座[組子細工に挑戦]を開催しました
展覧会〈アートな年賀状展2017〉関連イベントとして、日本の文化に親しんでいただくことを目的に開催しました本講座。建具や日本家屋の素晴らしさを広める活動に携わる小清水謙太さん・クルシノ沙貴子さんを講師に迎え、釘を使わずに木材を組み上げる「組子」の技法を使ったコースターづくりを行いました。

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小清水さんは「『組子』と聞いて、すぐイメージできる方は少なくなってきている」と語り、組子の歴史や特徴についてレクチャーをしてくださいました。組子は、元々は建具職人が自らの腕を自慢するために技巧的装飾を施すようになったのが始まりで、昔ながらの日本家屋が減少するとともに現在は姿を消しつつあるそうです。また、組子と聞くと木を削る技術にばかり目が行きがちですが、本当に必要なのは、反り・割れなど1本1本異なる木の癖を事前に見極め選別する『木を見る力』だとも。

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コースターのつくり方は、クルシノさんが実演しながら教えてくださいました。まずは最も基礎的な、木材に溝を付ける技法から。2本の木材に同じ大きさの溝を付け、それを十字形になるようにはめ込めば完成。手順自体はシンプルなのですが…。

「本来は、極細の線が引ける専用の道具を使います。鉛筆の線は太すぎて誤差の原因になるので。」
「ノコギリのアサリ(互い違いになっている刃)の分だけ大きく削れてしまうので、刃の一番外側が線に来るように注意してください。」
「ほんの少しだけ、ほんの気持ちだけ、内側に溝が入るようにノコギリを入れると良いです。」

クルシノさんはさくさくと手を進めながら、思いのほか難しそうなコツを、何でもないことのようにさらりと口にします。全て、1mmよりもずっとずっと小さい単位での話です。参加者の顔に不安の色が浮かびますが、笑顔で続けます。
「大丈夫です。手を動かすうちに、何となく掴めてきますから。」

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とにもかくにも、手を動かして挑戦です!
まずは練習用の木材を使って肩慣らし。重要なのは、全ての作業を慎重に、正確に行うこと。ほんの僅かなズレが後々の仕上がりに大きく響きます。
まずはスコヤ(直角を出すための定規)をまっすぐに当て、カッターの角度がブレないように注意しながら木材に線を引いて…。

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先ほど引いた線に合わせてノコギリを入れます。割り箸ほどの太さしかない木材に、髪の毛の先ほどの細い線。しかもノコギリの厚み分も考慮しつつ、刃の角度は垂直(気持ち内側)に…。気にすべきポイントがたくさんありすぎて肩に力が入ってしまい、うまく刃が入らない方も。それでもどうにか、切れ込みを入れることができました。

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あとは切れ込みにノミを差し込めば、自然とコの字形にえぐれて溝が付きます。さっそく出来た2本の木材を組み合わせてみるのですが…溝が小さすぎてはめることができなかったり、逆に大きすぎて隙間があったり、十字のはずがX字に組み上がったりと、全員大苦戦。
しかしながら、失敗を経験することで「次はこの部分に気をつけよう」というポイントもそれぞれに見つけることができ、次第に肩の力が抜けていった様子。ノコギリを引く姿が様になってきました。

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ノコギリの使い方に慣れてきたところで、いよいよコースターづくりに取り掛かりました。2種類の太さの木材をそれぞれピッタリ同じ長さで、4本+22本、狂い無く切り揃えます。そのうちの一部には、先ほど習得したばかりの溝付けも。組み上げてみて不具合があれば、ヤスリで長さを揃えたり、金づちで木材を叩いて潰す「木殺し」という力技によって溝を調整したりと、さらなる技法を駆使します。ミシミシと不安な音を立てながらも、何とか全ての木材が組み上がり、格子状のコースターが完成しました。

参加者の表情を見ると、作り終えた喜びもさることながら、見た目以上に難しかったことへの驚きが大きい様子。実際に手を動かしてみて始めて分かる建具職人の技術力に驚嘆していました。

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その後、組子の模様の代表格である「アサノハ」形のコースターの組み立てにも挑戦しました。驚くべきは、皮一枚を残して切れ込みを入れた木材に別の木材を差し込み、まるで3本で支えあっているかのように組み上げる技法。それも、ほんの少し指に力が入っただけで折れてしまいそうな薄い木材が使われています。

格子のコースターづくりの難しさを実感した直後の参加者たち。木材の1片を見るにつけ目を丸くし、どうやって切ったのか、溝を付けたのだろうかとあれこれ分析していました。

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全員のコースターを台座に並べての鑑賞会。製作中は手元に夢中でしたが、こうして離れて見てみると、木の個性によって色に違いがあったり年輪が光を反射して艶があるように見えたりと、それぞれに味わい深さがありました。

「思ったよりも難しかったけれども、自分でつくってみて初めて、組子の技術の凄さが分かりました」といったコメントが多く聞かれた今回の講座。
失われつつある伝統技術、そして昔ながらの日本の暮らしに思いを馳せる体験となりました。
本講座が、日常生活の中で見かける障子・欄間などの組子に関心を持つきっかけとなりましたら幸いです。

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by atlia | 2017-01-28 11:37 | 鑑賞講座・実技講座
たのしい実技講座「ぬくもりを味わう 和ろうそくづくり」を開催しました
12月23日(金祝)から25日(日)まで「クリスマス・ワークショップウィーク」と題し、クリスマスに因んだイベントを行いました。
第1段は、和ろうそく制作ユニット「haze(ヘイズ)」の寺澤勇樹さん・戸田佳佑さんを講師に迎え、18歳以上を対象に開催。天然の櫨蝋(はぜろう/櫨の実から搾り取った蝋)を用いた昔ながらの制作方法で、日々の暮らしと心をあたたかくする和ろうそくをつくりました。

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制作に入る前に、まずは講師から和ろうそくについてのお話をききました。
櫨蝋を用いた和ろうそくの始まりは室町時代。型取りする方法もあるけれど蝋の融点が低いので、手でつくることができるのだそう。表面には手のぬくもりが感じられ、安価な石油で大量生産される洋ろうそくより匂いも煤も少なく空気を汚しません。その特徴を大切にしてhazeのお2人は手づくりにこだわった制作活動を続けています。
櫨の実から絞ったままの生蝋(きろう)、和紙とイグサの髄(ずい)でできた燈心も専門の職人につくられた貴重なもの。それぞれ手に取り、触り心地や匂いを確かめました。

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今日つくるろうそくは生蝋とクリスマスらしいカラーのもの合わせて2本。参加者全員で1つのテーブルを囲み1本目に取りかかりました。
溶かした蝋の温度はおよそ40度。手ですくって燈心に塗り重ね、自身の体温も移っていくのを感じながら少しずつ少しずつ太らせていきます。手元に集中し、無心で繰り返す作業は瞑想にも似ていて、会場が静寂に包まれていきました。そうして生まれるろうそくの形は先細りだったり尻すぼみだったり。色の深いものや浅いもの、表面に様々な筋模様のあるものなど、同じ材料と手法でつくっていても個人差が出てくるのが不思議です。

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蝋の感触と制作方法をつかんだところで2本目をイメージしました。自然素材で色付けされた緑とピンクの蝋、どちらかで本体を成形し、仕上げに白い蝋を薄く塗り重ねる手の動きで表面に模様を施します。その技法を講師が実演。温度が高めの蝋を少量塗って素早く手を動かすと細かな斑点ができ、温度が下がって粘り気の出た蝋を多めに塗って捩じるようにすると螺旋模様が現れます。

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つくりたい色を選び、1本目と同じ要領で本体をつくりました。塗り付けた蝋が乾ききる前に次を重ねていく方が色が深くなると講師からアドバイス。各々一瞬の緊張感とともに表面も仕上げ、どんな具合にできたかを見せ合いながら会話が弾みました。

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全員の作品を並べてみるとそれぞれの個性と味わい深さが際立ちます。
「夢中でつくって偶然できた形が気に入った。」
「冬の空と平原に雪が降り積もる情景を表現した。雪の日にともしたい。」
「イメージ通りにはいかなかったけれど、ぬくもりを感じるとても良い時間が過ごせた。」
と1人ずつ感想を述べていきました。自らの手で生み出した1本1本に思いが込められています。

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作品を使う日への気持ちを高めるため、最後にろうそくを主人公にした絵本の朗読をききました。灯をともす人のひたむきな祈りや成長を描いた物語を、しっとりと読み上げる図書館員さん(川口市立中央図書館にご協力いただきました)の声にきき入る参加者たち。これからの暮らしと自分がともす特別な灯りへの期待を胸に、講座は静かに幕を閉じました。各々が大切に持ち帰った和ろうそくは、その心をどのように照らし、あたためるでしょうか。
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by atlia | 2017-01-04 09:00 | 鑑賞講座・実技講座
たのしい実技講座[金継ぎ技法入門 -繕いの器-]を開催しました
9月17日(土)、伝統技法「金継ぎ」を体験する講座を開催しました。
金継ぎとは割れたり欠けたりした器を漆でつなぎ合わせ、その部分を金で装飾しながら修復する修理法のこと。通常は漆を乾かすのに数日かかりますが、今回はどなたでも気軽に楽しんでいただける「入門編」として新うるし(漆の代用品として使用される塗料)を使って数時間で仕上げる方法を学びました。
講師は川口市内在住の金継ぎ師、吉沢博さん。今回のような簡易的な方法も含め幅広い金継ぎ技法に精通しておられます。
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会場にやってきた参加者はさっそく持参した器の傷を吉沢さんにチェックしてもらいます。そっと開けた包み紙から取り出したのは、長年愛用の湯呑み、夫婦茶碗、自作の香炉など、どれも思い出深い大切な器ばかり。
「これは良い器ですねぇ」「きっと金が映えるでしょう」
自慢の器を吉沢さんに褒められ、参加者のやる気は倍増です。

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講座が始まると、参加者は映像やテキストを見ながら器の修理方法の歴史を学びました。
金継ぎは室町時代に始まったと言われていますが、その源流は縄文時代にまで遡るというのだから驚きです。割れた土器を漆で接着し、光沢のある砂粒で装飾したものが縄文遺跡から発掘されているのだとか。これはほとんど金継ぎと同じ考え方です。
そこから現代へと受け継がれる間に開発された修理技法は多種多様。金具で器をホチキスのように留める「かすがい継ぎ」、欠けた部分に別の器の欠片をはめ込む「呼継ぎ」、 まるで一度も割れていないかのように修理する「とも直し」。金継ぎ師は器の用途やデザインなどに合わせてこれらの技法を使い分けるそうです。

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金継ぎの一通りのやり方を吉沢さんに教えていただいた後、それぞれの器で実践スタート。割れた部分は接着剤でつなぎ合わせ、欠けている部分には小さな和紙とガラスの粉を埋めます。和紙の大きさは1cmに満たないどころか、ほんの数ミリ。うっかり落として見失いそうになりながらも、全神経を指先に集中させて取り組みました。
さらに埋めた部分の表面をヤスリがけして滑らかにします。ここでの磨き残しは金の発色不良のもと。器を光にかざして何度も確認し、凹凸がある場所には再び接着剤を詰め、徹底的に磨き上げました。

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十分にヤスリがけができたら、割れ目・継ぎ目をなぞるように新うるしを塗ります。はみ出さず、塗り残しのないよう、そして均一な厚みになるよう。息をするのも忘れるほど慎重に筆を進めました。

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塗った新うるしを数分乾かし、いよいよ金紛を蒔きます。
筆に金粉をたっぷりつけ、新うるしの上からサッとなぞるように。数回なぞっただけでもしっかりと紛がくっつきました。
傷の修復にかけた時間に比べると金蒔きはほんの一瞬。でもたったその一瞬で、まるで新しい命が吹き込まれたかのように、器にしっとりとした輝きが宿ったのです。
金を蒔いた器を見た途端、参加者の表情までも明るくなりました。

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出来がった器は金が剥がれないようそっと机に並べ、全員で見せ合います。締めくくりに参加者一人ひとりが今日の講座を振り返って感想を述べました。
「壊れてから長い間しまっていたけれど、また使えるようになって嬉しい」
「金継ぎしたことで以前よりもっと素敵になった」
器を手にする参加者の眼差しは一様に優しげ。講座終了後には、器の入った箱をまるでわが子のように大事そうに抱いて帰る姿も見られました。

壊れて使えなくなった器を修復し、新たな魅力をも与える金継ぎ。傷によって価値を増すという考え方は、器が今よりもずっと貴重だった時代の先人たちの「心」から生まれたものに違いありません。
今回の講座は、器を使い続けるための知恵だけでなく、器を大切にする気持ちをも学ぶ機会ともなりました。

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by atlia | 2016-09-23 09:00 | 鑑賞講座・実技講座
ここにも通信![まちに生きるアート]を開催しました
5月14日(土)、開館10周年記念展〈ここにもアート かわぐち〉、ご好評のうちに終了いたしました!
たくさんのみなさまのご来場、ありがとうございました。

その最終日、関連イベントとしてやさしい鑑賞講座[まちに生きるアート -現代アートにおける地域連携の可能性]を開催しました。
講師は本展図録にもご寄稿いただきました、画家でもあり美術ジャーナリストとしても活動中の村田真さん。
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近年多くの土地で展開をみせる「地域アート」の発生と可能性をお話いただきました。

そもそも、「地域アート」って何?というギモンには、いくつかの答え(になり得るもの)があるでしょう。
例えば、まち(美術館以外の場所)で作品を見せること。
例えば、完成した作品より、それができる過程を重視したり、制作の途中で地域に住むひとが関わること。
例えば、地域の中から作品の素材を探したり、場所にあわせて作品自体を制作すること。
などなど、複数の特徴が挙げられます。
もちろんすべてそうでなくてはならないということはなく、何が重視されるかによっても実情は変わってくる、と村田さんはお話しました。
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こういった「地域アート」が生まれたのは、モダンアートからの流れだと考えられるとのこと。
「芸術のための芸術」が追求された時代、美術はどんどん社会から乖離していってしまいました。社会性を失いつつあったのを問題視されはじめたのは、1980年代後半くらいから。
ベルギーのゲントで開催された〈シャンブル・ダミ〉(複数の民家で作品を展示した回遊型展示)、ドイツのミュンスターで開催された〈彫刻プロジェクト〉(10年に一度開催される野外彫刻展)などが先駆的な例として挙げられました。
そこで議論されたのは、「芸術と公共性」、そして「街おこし」という観点です。
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日本でも、最近は〈越後妻有アートトリエンナーレ〉や〈瀬戸内国際芸術祭〉、〈札幌国際芸術祭〉などが大きな話題となりましたね。
村田さんは各地で取材してきた経験から、多くの作品を紹介し、それぞれの作品の現状と可能性について、お話してくださいました。
地域のひとたちを刺激してコミュニティが活発になるということを狙う一方で、観光の目玉として注目されるという効果など、その作品のありようや評価軸はさまざまであり、一定のものは無いと言います。
社会が変わっていくなかで「アートの社会性」も変わっていくのは当然と言えるかもしれません。
「地域とアート」あるいは「地域アート」という観点が見いだされてしばらく経った今、今後どう展開していくのか。

質疑応答の時間でも、参加者のみなさまからたくさんのご意見・ご質問をいただき、刺激的な講座となりました。
ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました!

もちろん、アトリアでも「地域アート」について、これからますます深く考えていかねばなりませんね。
スタッフにもたくさんの刺激をもらい、これからにつながる機会となりました。

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終了いたしました!たくさんのみなさまのご来場、ありがとうございました!
本展に関する記事は「ここにも通信」といたしまして、過去の記事からご覧いただくことができます。

平成28年春の企画展/開館10周年記念事業
〈ここにもアート かわぐち〉

アトリアから作品が飛び出した!ここにも、そこにも、どこでも、アート!

今まさに発展を遂げているまち:川口で、みずみずしい感性のアーティストたちの表現があふれ出す!油絵・日本画・彫刻はもちろん様々な作品を市内の施設で展示しました。
開催期間:2016年3月19日(土)~5月14日(土)
展示会場:川口市立アートギャラリー・アトリア、川口駅前複合施設キュポ・ラ内各所、川口市立グリーンセンター


出品アーティスト:片庭珠実、角野泰範、馬場知子、山本智之、青木邦眞、高野浩子、佐藤裕一郎、杉田 龍、小林美樹、八田真太郎、後藤雅樹、羽山まり子、青木聖吾、遠藤研二、大和由佳、對木裕里、堀口泰代

展示した会場のご紹介(リンクあり)
施設名をクリックすると該当の施設のホームページやアクセス情報をご覧いただけます。
川口市立アートギャラリー・アトリア 
川口市立映像・情報メディアセンター メディアセブン(キュポ・ラ7階)
かわぐち市民パートナーステーション
(キュポ・ラM4階)
川口駅前行政センター(キュポ・ラ4階)
川口市立グリーンセンター

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by atlia | 2016-05-18 11:53 | 鑑賞講座・実技講座
ここにも通信![はじめての銅版画]を開催しました。
3月26日(土)・27日(日)の2日間、開館10周年記念展〈ここにもアート かわぐち〉に関連し、
銅版画の技法に触れ奥深い表現をお楽しみいただく実技講座を開催しました。
講師は出品者・版画家の馬場知子さん。現在アトリアで「エッチング」という技法をつかった作品を展示されています。
今回は参加者さんも同じ技法での制作に挑戦しました。

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最初に様々な作例を参照しながら、手順を教えていただきました。
エッチングは簡単にいうと、銅版にあらかじめ塗っておいた防蝕膜をニードルと呼ばれる先端の尖った道具等で引っ掻くことによってはがし、腐食液という銅を溶かす溶剤に浸けその部分を腐食させて溝をつけ、(凹)版をつくる技法。いくつもの工程を経て完成するため、一度聞いただけでは覚えられないほど複雑です。参加者さん、ちょっと不安気…。
でも大丈夫。馬場さんは「とにかくやってみないことには」と参加者さんを勇気づけます。1日目は小さめの銅版に自由に試し彫りし、刷りまでの工程を一度やってみることにしました。

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まずはニードルで描きますが、要は”防蝕膜をはがせばいい”ということなので、サンドペーパー、油性の溶剤なども用いて思い思いに描画しました。手を加えた部分は防蝕膜がはがれ、もとの銅版がキラリと覗きました。木版と違って力がいらないのであまり「彫っている」という感覚はなく、実際この時点ではインクが溜まるための溝はできていません。
その後、銅版を腐食液に浸けると、描画した部分だけが腐食し、インクが溜まる溝ができました。浸けている時間が長いほど線は深く太くなっていきます。

木版やゴム版など手の力で直接溝をつくる版画技法は馴染みのある方も多いですが、銅版に溝をつくるのは化学の力。参加者さんからは「なんだか不思議だねぇ」との感想が。

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銅版の腐食が終わったらいよいよ刷り。ゴムべらで黒いインクを版全体につめます。そのあと専用の布で表面を軽く拭きとると、余分なインクがとれて腐食させた溝の中にだけインクが溜まっていました。髪の毛ほどの細さのところにも、よく見るときちんとインクが入ってる!


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そして出ました、アトリアの秘蔵っ子、重厚感あふれるプロ仕様のプレス機(実は川口製)。
銅版の上に紙を重ね、ゆっくりとハンドルをまわしてプレスしました。
噛みあいながら回転する歯車がカッコいい。思わず全員で見惚れてしまいました。

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刷り上がりはこのような感じに。一つの版の中に多くの技法がギュッと詰まり、まるで抽象画のよう。
まとめとして、参加者さん全員の試し刷りを一堂に並べ、それぞれがどのような方法で描かれたのか情報交換しあいました。

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2日目は本制作。用意してきた下絵を銅版に写します(新しい下描きを用意し直して来られた方も)。
気合い十分、ニードルを持つ指先にも力がこもっていました。1日目に学んだことを振り返りながら描画しました。覚えたての技法をさっそく使ってみようと、エッチング以外にも挑戦した方も多くいらっしゃいました。

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時間を忘れて没頭すること、3時間半。
描画・腐食が一通り済んだところで本番の刷りを行いました。
プレスされた紙を銅版上からめくり仕上がりを確認する瞬間は、期待と緊張が入り混じります。

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作品が刷り上がった後は、一列に並べて観賞会をしました。
何種類かの技法をミックスしたものが多く、一つの作品の中でも部分によって異なる技法が用いられるなど、工夫が凝らされていました。
しかし、まだまだやり足りない参加者さんからは「もうちょっとこうしたい」「この部分を変えるにはどうすれば?」というご意見やご質問も。

馬場さんに伺ったところによると、最初に思い描いてたイメージと実際に刷った作品のイメージがピッタリ合うことはほとんど無いとのこと。でもそこが面白いのだそうです。刷ってみて描き足し、また刷ってみて手を入れ作業を繰り返しながら、下絵とは違った魅力のある世界ができあがるようです。
小さなサイズの中に、つくり手の豊かな時間が詰まっている銅版画。展覧会で作品を鑑賞するときにもそのことを思い返してみると、また一味違った見方ができそうです。

4時間×2日間と長めではありましたが、それでも名残惜しささえ感じるような実技講座となりました。
参加者さんが今回の講座をきっかけに、銅版画の世界により関心を持っていただければ嬉しいです。



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平成28年春の企画展/開館10周年記念事業
〈ここにもアート かわぐち〉

アトリアから作品が飛び出した!ここにも、そこにも、どこでも、アート!

今まさに発展を遂げているまち:川口で、みずみずしい感性のアーティストたちの表現があふれ出す!油絵・日本画・彫刻はもちろん様々な作品を市内の施設でご覧いただけます。
開催期間:2016年3月19日(土)~5月14日(土)
展示会場:川口市立アートギャラリー・アトリア、川口駅前複合施設キュポ・ラ内各所、川口市立グリーンセンター
観覧可能時間:施設によって異なりますので、下記施設のホームページへのリンクをご参照ください。


出品アーティスト:片庭珠実、角野泰範、馬場知子、山本智之、青木邦眞、高野浩子、佐藤裕一郎、杉田 龍、小林美樹、八田真太郎、後藤雅樹、羽山まり子、青木聖吾、遠藤研二、大和由佳、對木裕里、堀口泰代

展示会場リンク
施設名をクリックすると該当の施設のホームページへリンクします。
開館時間やアクセス情報をお確かめの上、ご来場ください。
川口市立アートギャラリー・アトリア 
川口市立映像・情報メディアセンター メディアセブン(キュポ・ラ7階)
かわぐち市民パートナーステーション
(キュポ・ラM4階)
川口駅前行政センター(キュポ・ラ4階)
川口市立グリーンセンター
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by atlia | 2016-04-09 11:27 | 鑑賞講座・実技講座
やさしい鑑賞講座[書の美しさを楽しむ]を開催しました
新春企画〈アートな年賀状展2016〉に関連し、
1月24日(日)やさしい鑑賞講座[書の美しさを楽しむ]を開催しました。

「書」というと、崩し字が読めなかったらどうしよう、歴史や知識をしらないといけないのかな?と思いがち。
今回の講座では、それを造形的な観点から鑑賞する「コツ」を教えていただきました。

講師には大島武さん、松本市美術館の学芸員さんです。
松本市美術館は地元出身の現代美術家:草間弥生のコレクションなどで知られているところですが、大島さんは同じく市内出身の書家:上絛信山(かみじょう・しんざん)の記念室を担当していらっしゃいます。
松本城の石碑に揮毫したという信山の作品を例に「書」の表現について、お話をいただきました。

上絛信山の作品は思い切りのよい筆運びが美しく、中国的でも日本的でもないと言います。
大島さんは、その「リズム」を音楽に例えて見てみる方法はどうか、と提案しました。
実際にどんなリズムが浮かぶか、ワークシートを配布し、参加者の方々にも考えてもらいます。
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行書と草書と言われても、その区別はちょっと難しいですが…。しかし、まずは音に例えてみましょう。
文字の線自体が太くどっしりとしたものが連続するところはバスドラム、すっと力の抜けた「払い」・幾重にもなっているようにも見える「かすれ」は軽やかなエレキギター…などと思うと、これはどちらかというとロックな感じでしょうか。
文字と文字の間にある余白は休符、あるいはなめらかに続けているところは途切れずにレガートで音がつながっていると考えたら、それを辿る音楽が聞こえるような気がしはじめます。
なるほど、これは言葉として意味を読み解こうとするだけでは見えなかった視点です。

書こうとする紙にむかうとき、書きたい言葉・文字をどう配置していくかも重要なポイント。
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「壮心」という作品では、文字だけで見るとそのバランスはちょっと変わっています。
「壮」は力強くはっきりとした太い線で、それを受ける「心」は3つの点画が均等に並び何重にもなるかすれた線でつながっており、多少対比的とも言えます。
また、「壮」に比べると「心」は頭がひっこんだように小さめです。しかし、小さめにすることで、横への広がりが意識できるとも言えそうです。
ここでは、いわゆる「余白」のとり方が重要。絵を描くときに「構図」を思い描くことと同じですね。
思い切って「心」の上を空けたことで、全体がつまりすぎず潔さが目立った作風になったと大島さんは言います。
そこに作者を示す印である落款がおかれたことで、縦のバランスも整っているよう。

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ここでも、実際に文字を並び替えてみるワークシートをつかい、参加者の方々にも「配置」に挑戦していただきました。
文字を切り取って白い紙の中で並び替える、パズルのような感じ。
並べるときは、単語としての意味だけでなく、どうやったら文字のつながりが自然になるかを考えます。もちろん、その周りの余白の大きさも加味して。
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ワークシートを離して見て全体のバランスを考えるなど、やってみると意外に悩む!
先ほどの「音とリズム」の話で好きな音楽に例えたように、参加者それぞれの個性も出た様子でした。

大島さんが用意してくれたワークシートは、「書」をより能動的に鑑賞するしかけと言えます。
今ある作品がどのように考えられ制作されたのか、自分自身で動かしながら考えてみることで、それが造形的に優れた感覚でつくられているものであると実感できました。

最後に、大島さんは信山が遺したという言葉を紹介してくれました。
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それは常に表現に迷い、探し、しかし深く考えた一生をあらわすもの。
「書」に向き合い続けた一人の芸術家の姿勢から読みとれるのは、その可能性は無限であるということです。大島さんがずっと追い続ける魅力も、わかる気がしますね。

言葉や文字として読むという「読解」という視点だけでない「鑑賞」の意味を改めて考え、多角的な「書」の魅力に触れた今回の講座。
しかしそのお話も「書」を楽しむ方法のほんの入り口。
様々な作品に触れてみたいと思えるきっかけとなりました。
by atlia | 2016-02-06 14:33 | 鑑賞講座・実技講座
たのしい実技講座[文字を楽しむ!活版印刷]を開催しました。
1月17日(日)、〈アートな年賀状展2016〉関連 たのしい実技講座[文字を楽しむ!活版印刷]を開催し、7名の方に参加いただきました。
講師はTokyo Pear(デザイン兼印刷スタジオ)のスミスダレンさんとスミス恵梨子さん。
おふたりはアメリカ・シアトルで活版印刷に出会い、帰国後日本でその魅力を広めようと活動を開始しました。

活版印刷とはハンコに似た凸状の活字にインクを塗り、紙を押しつけて印刷する古くからの印刷技法。今回はアルファベットの木活字を使って、世界にひとつのオリジナルミニノートを制作しました。
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活版印刷の名刺やお手紙をもらうことがあっても印刷機や活字を見るのは初めてのこと。
並べられた活字に参加者たちは興味津々。恵梨子さんは手にとって説明を始めます。
ひと口に活版印刷と言っても使用される用途や国によって発展していった経緯が異なり金属、木、樹脂でできたものなど活字の種類は様々。文字の種類が多い日本では金属を型に流して活字をつくっており、一方イラストなどの図案はコンピュータでデザインして樹脂でつくったものが適しているそうです。
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今回使用する木活字は文字数の限られた英語圏で多く使われていました。
おふたりが持ってきてくださった活字は以前アメリカで実際に使われていたもの。古いものなのでキズやへこみもありますが、それは活字の個性。「印刷されたときにはその傷も紙に写り、文字の味になります。」と恵梨子さんは話しました。
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お話のあとにノートの制作へ。表紙となる紙を選び、ノートのデザインを決めていきます。思いおもいに活字を選び、組み合わせる参加者たち。文字の傷を吟味しながら選ぶ様子も見られました。
名前と数字を重ねて印刷したい!単語をじぐざぐに置きたいんだけれど…デザインに悩んだら講師に相談しつつ配置していきます。
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デザインが決まったら活字がばらばらにならないよう印刷機の枠に固定します。このときに文字の間隔は薄い板や金属部品を間に詰めることで調整します。コンピュータで行えばボタンひとつでできる工程ですが、昔はこのように手間をかけていたことに驚きました。
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そしていよいよ印刷です!手キンと呼ばれる印刷機に紙と活字をセットしインクをになじませ、レバーを下ろします。
ガッチャンという音とともにぐっと力をかけるのですがなかなか下がらず苦戦する参加者たち。全体重をかけても動かないときはダレンさんが手助けしてくれます。

印刷するまでどんなものに仕上がるか分からないのが活版印刷。作品とドキドキの対面です。
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活字から離れた紙をみて参加者たちの顔がほころびます。どうやらきれいに印刷できたようです。参加者の嬉しそうな表情に講師も笑顔を浮かべます。
時間をかけ自らの手でプレスしたことで喜びもひとしお。ひと押しひと押しに思いが込められていきます。

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活字の個性だけではなく、インクのムラやかすれ、ちょっとした版のズレが印刷物の味になる活版印刷。
よく見ると同じデザインの中にも色々な表情が見られます。ひとつひとつ思いを込めてプレスした参加者たちはその表情を見極め、お気に入りのものをノートの表紙にします。
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製本し完成したノートに満足な表情の参加者たち。難しかったり力が必要だったりと苦心する工程から印刷技術の発展を経験し、手作業でしか出せない温もりを感じることのできる実技講座となりました。

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by atlia | 2016-01-21 16:44 | 鑑賞講座・実技講座



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