9月24日(日)、日本画の魅力や楽しみ方を学ぶ講座シリーズ「日本画ウィーク」第三弾として「やさしい鑑賞講座」を開催しました。講師は文化財保存技術者の鈴木晴彦さん。
日本画の「保存修理」と聞くと、絵具の剥離や本紙が破れた作品など破損してしまった作品を直すイメージがあるかもしれません。しかし実際には、前もって劣化や破損を防ぐための予防を講じておくことが重要。鈴木さんは作品が経年変化していく過程、劣化と損傷について身近な日用品を例にお話しました。
さらに市が所蔵する作品2点について、鈴木さんに保存状態を見ていただきました。透過光を用いて絵具の状態を調べたり、裏打紙の継ぎ目を確かめたり、実物を使ってその場で行う点検作業は臨場感たっぷりでした。
作業に使う材料・道具の数々を目の前で見せていただくこともできました。紙を伸ばす・糊をつけるなど工程によって使い分けられる刷毛や、紙を切るために丸い形をした包丁など、普段見る機会が少ないものばかり。参加者は興味津々といった様子で解説に耳を傾けていました。
鈴木さんのお話の中で特に印象的だったのは「作品の今の状態だけでなく、過去にどのように扱われてきたものなのか・これからどう活用し保存していくのかを考えなくてはいけない」という言葉。今ある作品は過去の誰かから引き継いだものであり、今を生きる私たちが未来へと伝えていく必要があるのだと感じさせる2時間になりました。
本講座がみなさまにとって「作品を伝えること」について考えるきっかけとなれば幸いです。