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日本画ウィーク第二弾:たのしい実技講座[日本画を描く]を開催しました
日本画の魅力や愉しみ方を学ぶ講座シリーズ「日本画ウィーク」。第二弾は9月16日(土)、たのしい実技講座[日本画を描く]と題し、作品制作を体験しながら日本画の基礎を学びました。講師は前回に引き続き今西彩子さん(鎌倉市鏑木清方記念美術館 学芸員)、ほか鏑木清方記念美術館のサポートメンバーである寺澤さん、三澤さん、津久井さんにも実技指導していただきました。
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制作を始める前に今西さんから日本画の絵具について解説を受けました。日本で古くから使われている「岩絵具(いわえのぐ)」は孔雀石(くじゃくいし:マライカイト)や藍銅鉱(らんどうこう:アズライト)などの言わば宝石を原料にしたもの。各地の土を精製してつくられていた「水干絵具(すいひえのぐ)」は後に色鮮やかなものが開発されたそうで、これらに動物の皮や骨からとった「膠(にかわ)」を接着剤として加え、練り混ぜてから水で溶いてようやく1色が使えます。棒状に固められた「三千本膠(さんぜんぼんにかわ)」は残念ながら職人が少なくなり、材料全ての貴重さが増しているのだとか。





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使う絵具の11つを画家の手で調合する日本画の制作には非常に手間と時間がかかりますが、今回主に使う「顔彩(がんさい)」は、湿らせた筆で表面を撫でれば使える固形絵具。色を濁らせることなく仕上げるには描きたい絵の全体をイメージして薄い色から順に塗っていくこと、太いものから細いものまで筆をうまく使い分けるコツなどが寺澤さんより伝えられました。

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描くための基礎知識を得たところで作品の下絵に取り掛かります。参加者各自が用意してきた図案は身の回りの草花をスケッチしたものから動物図鑑のページまで様々。色紙への描き写し方、より良い構図のとり方などについて三澤さんや津久井さんにアドバイスを受け、鉛筆で輪郭線を描いていきました。

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そしていよいよ彩色に入ります。各机に置かれた顔彩は赤系統だけでも10種類近くあり選ぶのに迷うほど!それぞれの色を確かめ、あるいは混色し、その違いやにじみなどを楽しみながら多彩に塗り分けていきました。
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彩色に慣れてきたら試しに1色、岩絵具または水干絵具を使ってみます。絵具皿に粉状の絵具を入れ、溶かした膠と水を少量ずつ加えて人差し指と中指で練り混ぜました。日本画ならではの体験に神経を集中しつつも初めての感触に思わず笑みがこぼれます。
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そしてできた色を作品に加えてみます。岩絵具は顔彩と同じ調子で筆を走らせると色が伸びずにかすれてしまうのですが、そこが何とも言えず良い味わい。「きれいだなぁ」と、何度もつぶやく参加者の声が聞こえました。
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彩色を終えた参加者は作品の余白に砂子(すなご:金色の箔を細かい粉にしたもの)をまきました。不規則に舞い散る光の粒が朝露や流れる風を思わせ、描いた絵を引き立てます。
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そして最後に全員の作品を並べて鑑賞会。津久井さんが11人の作品に見られる良さや工夫についてコメントし、その成果を称える拍手が上がりました。参加者からは

「日本画はよく観に行きますが描くのは初めてでとても難しかったです。」

「奥深さと難しさ、楽しさを学ぶことができました。」

との感想をいただきました。じっくりと手をかけ生み出す日本画の彩りの豊かさを体感できたのではないでしょうか。


このシリーズに関する過去の記事はこちら
日本画ウィーク第一弾:日本画ウィーク第一弾:やさしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]を開催しました
日本画ウィーク第二弾:たのしい実技講座[日本画を描く]を開催しました_c0222139_19524998.jpg
by atlia | 2017-09-17 12:00 | 鑑賞講座・実技講座