清方の人柄を伝える資料として、生前録られた音声や動画も紹介されました。当時はまだ珍しかったムービーフィルムを使って自ら撮影や上映会を行うほど新しもの好きだったそうですが、その肉声でしみじみと語られるのは江戸の風情を残し「感受性豊かだった」明治の庶民生活への愛着。市井の人を描く動機を示すエピソードに参加者たちは興味深そうに聞き入っていました。
会場には今回だけ特別に、奥村土牛の作品(実物)を展示していました。これからの季節にぴったりな《柿》。講座の後に鑑賞すればより描き方の特徴が見え、風情も感じられます。普段はどこか遠くに感じがちな「日本画」ですが、人の暮らしとの結びつきを知ることでぐっと身近に親しむ機会となりました。