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日本画ウィーク第一弾:やさしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]を開催しました
9月の第3~4週にかけて「日本画ウィーク」を開催しました。日本画を見たり描いたりしながらその魅力や愉しみ方を学ぶ初心者向けの講座シリーズです。
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第一弾は13日(水)、たのしい鑑賞講座[日本画をみる‐明治~昭和を中心に]と題し、講師の今西彩子さん(鎌倉市鏑木清方記念美術館 学芸員)に日本画の特徴や鏑木清方をはじめとする近代の画家・作品ついてお話しいただきました。




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この日を楽しみにお越しくださった会場いっぱいの参加者に向けて、まずは日本画の歴史について解説。古代~中世、日本の絵画は人々の住居や暮らしの変化とともに発展していきました。日常生活と仕事を区別するためのいくつもの部屋がつくられ、室町時代に建てられた武家屋敷の障壁画では、多くの人が集まる広間にはたおやかな「大和絵」、武士の居室には勇壮な「唐絵」が好まれたのだそうです。近世には様々な画風をもつ流派が生まれていき、たっぷりとした余白が特徴の「狩野派」、一色の絵具が乾かないうちにもう一色をにじませる「垂らし込み」の技法を用いた「琳派」などがその代表格。明治以後普及していった西洋画と区別するため伝統的な日本の絵画を「日本画」と呼ぶようになったのだとか。
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鏑木清方は変化の激しい明治~昭和の時代を生きた画家です。東京神田に生まれ、新聞などの挿絵画家として画業をスタートしましたがのちに日本画家へと転身。庶民の暮らしや文学などを題材にした優美な女性像を多く描きました。川口市が所蔵する《墨田川両岸 梅若塚・今戸》(2008年市内で鋳物業を営む田原家より寄贈)は歌舞伎などで有名な梅若丸伝説に因んだもの。背景によく目をこらすと、水面を泳ぐゆりかもめや当時盛んだった「今土焼」など、江戸の風物が描き込まれています。
清方の人柄を伝える資料として、生前録られた音声や動画も紹介されました。当時はまだ珍しかったムービーフィルムを使って自ら撮影や上映会を行うほど新しもの好きだったそうですが、その肉声でしみじみと語られるのは江戸の風情を残し「感受性豊かだった」明治の庶民生活への愛着。市井の人を描く動機を示すエピソードに参加者たちは興味深そうに聞き入っていました。

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最後に川口市の所蔵作品から横山大観や前田青邨、川合玉堂など、清方と同時代を生きた日本画家たちの作品が紹介されました。身近な風景や動植物を題材にしつつ、ひろい余白や絵具の垂らし込みなどに伝統から学んだ美が生きています。
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会場には今回だけ特別に、奥村土牛の作品(実物)を展示していました。これからの季節にぴったりな《柿》。講座の後に鑑賞すればより描き方の特徴が見え、風情も感じられます。普段はどこか遠くに感じがちな「日本画」ですが、人の暮らしとの結びつきを知ることでぐっと身近に親しむ機会となりました。

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by atlia | 2017-09-14 12:00 | 鑑賞講座・実技講座