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ATLIA STAFF BLOG
時間の位置の物語(5)―物語を残すこと
好評開催中、平成28年秋の企画展/開館10周年記念事業第2弾〈河口龍夫―時間の位置〉。会期もそろそろ折り返し。
本展がより楽しめる情報をスタッフ目線でお届けする「時間の位置の物語」、連載第5回目となりました。
今回は、お待たせしました!本展図録のお話。

本展の図録は、当館会場でより意味を強くする作品や大型インスタレーションを記録してみなさまにお届けするため、会期中の発行というご案内をしておりました。現在は予約を承っております。
会場に作品が入ってからこれまで鋭意編集を続けてまいりましたが…いよいよ明日10月30日(日)より会場でみなさまにお手にとっていただけます!
今回は河口龍夫さんのエッセイのほか、建畠晢さん(埼玉県立近代美術館館長・多摩美術大学学長/美術評論家)や鞍田崇さん(明治大学理工学部准教授/哲学者)にもご寄稿いただいた豪華仕様、すべて日英併記です。

出品作品の撮影は作品が会場に並べられてからすぐ、展覧会公開の直前に行いました。
実は、当館で作品を撮影するのは、とっても難しいんです。それは、外からの光が入るから。
ガラス張りの空間は開放的な雰囲気で当館のひとつの特徴にもなっているのですが、アート施設ではちょっと珍しいつくり。
そういった場所で正確に色を判断するため、カラーチャートを手で持って撮影したりするのですよ。
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助手さんがお手伝いしてくれています。

フォトグラファーさんが撮りおろしの写真は、すぐにデザイナーさんの元へ送られます。
それをレイアウトした原稿のデータを印刷会社さんにお渡しすると、「色校」と呼ばれる試し刷りを出してくれます。印刷の状態を見て、作品の色がちゃんと再現されているか確認します。
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ここはもう少しコントラストを上げてはっきり黒っぽく…この部分は少し明るくして…など、デザイナーさんと打合せを重ねるのも展覧会担当のお仕事。少し調整が必要な写真はデータを修正してもらい、再び印刷会社さんへ。

本文の印刷の間には、表紙の準備が進められていました。
本図録は表紙もこだわりの仕様。チラシにも採用した銀色を箔押ししました。箔押しとは、その名のとおり、インクでなく薄い箔を紙に圧着させる印刷方法。箔を専門とする印刷関係の会社さんもあるくらいなんですよ。
紙と箔を専用の機械に挟み、がっちゃんと重みをかけます。
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すると重みがかかった部分だけに箔がくっつき、イメージが印刷されたように紙に残ります。
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艶消しの銀が灰色の紙に映える、渋いデザイン。更に銀色の部分には多少のエンボス加工(凸凹をつけること)を施しました。

更にその表紙に味を加えるのは、背景に印刷された白いインク。これはいったい何の模様かな…とすぐに判断はつかないかもしれません。
実は、これ、当館の床、なんです。…そう言われても、ぴんとこないかもしれませんね(当館の特別は床については連載第1弾記事で!)。
実は、これは河口さん自ら当館の床をフロッタージュしてくれたイメージを印刷しています。
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「フロッタージュ」は刷り取りとも呼ばれる絵画技法ですが、凸凹したところに紙を置き、その表情を鉛筆など固めの画材で写し取るもの。河口さんは、刷り取る対象が過ごしてきた「時間に触れる」行為ととらえています。
つまり、今回の図録の表紙はアトリアが過ごしてきた時間に河口さんが触れた、その痕跡を表現したもの。それを薄く白いインクでのせて背景にしているのですね。

そこに本文部分が印刷されたものが挟み込まれ製本されると、図録の完成!
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完成した図録は、またお手に取っていただいた方の元で、新たな時間を刻んでいくのを待っています。
色々な方にご協力いただき完成にいたった自信作です!ぜひ会場でご覧ください。

販売開始の10月30日(日)にはご寄稿いただいたお2人(建畠さん・鞍田さん)と河口さんのトークセッションもありますよ!お楽しみに。


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展覧会図録
特別価格:500円(税込)

編集:秋田美緒(川口市立アートギャラリー・アトリア)
翻訳:工藤亜由美
撮影:齋藤さだむ
   ※一部編集者撮影
デザイン:中新(Lallasoo Poopo Lab.)
印刷・製本:有限会社山北印刷所

※ご予約いただいているお客様には順次発送してまいります。もう少々お待ちくださいませ。
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2016年10月30日(日)16:00~17:30(開場15:30)
トークセッション いとおしき「時間」たち
登壇:河口龍夫(出品作家)、建畠晢(美術評論家/埼玉県立近代美術館館長)、鞍田崇(哲学者/明治大学准教授)
参加費:500円(展覧会観覧料込)
※当日のみ開館時よりチケットを販売いたします(事前申込不要)
http://atlia.jp/ws_lecture/

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川口市立アートギャラリー・アトリア
開館10周年記念事業第2弾/平成28年秋の企画展
〈河口龍夫―時間の位置〉

時間は、現場に掘り起こされる。

2016年10月8日(土)~11月26日(土)
10:00~18:00(土曜日のみ20:00まで開館)

休館日:月曜日(ただし10月10日(祝)は開館、翌11日(火)は休館)
※10月12日(水)、11月1日(火)に展示替え予定

観覧料:300円(高校生以下無料)
※開館10周年記念リピーター割:当館ロゴの入っているチケットやチラシ(本展のものを除く)を受付でご提示いただいた方は半額(他の割引制度と併用不可)

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by atlia | 2016-10-29 16:06 | 企画展