いよいよ芸術の秋、大注目の展覧会は10月8日(土)オープンです。
このスタッフブログでは、本展がより楽しめる情報や作品・作家についてのお話はもちろん、ここでしか言わない?スタッフ目線の裏話などを「時間の位置の物語」と題して発信してまいります。
会期中も前後も気まぐれ更新、展覧会担当スタッフがお送りいたします。どうぞお付き合いくださいませ。
記事第1弾、最初の物語は会期より先行配信!本展の「はじまり」についてお話させてください。
本展は現代美術の第一線で活躍し続けるアーティスト:河口龍夫さんの個展、なのですが、何故、それが「アトリアの10周年記念企画」として行われるのか?
本展の中心であり、最初の歯車となったのは《DARK BOX》という作品群の存在です。
これは「闇が閉じこめられた箱」です。真っ暗な空間のなか、鉄でできた箱をボルトで閉じて闇を封印。するとそこにあった闇の一部が切り取られ、保存されます。それを光の中に持ち出せば、光の中で箱越しに闇と対峙することができる、と考えられてつくれらた立体作品です。
不器用とも言えるほどまっすぐで真面目な手法をとったこの作品。コンセプトも秀逸なのですが、注目すべきは、その「箱」の部分。
実はこれ、川口市が誇る産業「鋳物」の技術を駆使してつくられた、鉄の箱なのです。
担当スタッフは考えました…この川口でつくられた鉄の箱で、川口の闇を閉じこめてみたい、と。
そして、何よりも10周年の節目に、作品をここでつくることができたら。いつまでも2016年の川口の闇が川口の鉄の箱の中に残ることになるのです。
そして、次の歯車は「闇」の存在です。
みなさまの周囲に、完全な「闇」というのは、存在しますか?いや、ちょっと難しいかもしれません。
完全に「ひかり」(電気、月明り、火、など…)が全く無い空間は、わざとつくり出さない限り、なかなか出会えないものです。
しかし、アトリアのすぐそばには、なんとその「完全な闇」ができようとしているのです。
それが「並木元町雨水調整池」。大雨などの際に一時的に雨水を貯めておく下水道設備、いわば巨大な地下水槽が今まさに隣に建設中。
地面をおよそ30mも掘りこんでいく工事は大規模なインフラ整備として、川口市民にとっても重要なものです。
そして、この地下に埋まる水槽は、蓋を開けない限り、完全な闇であることに間違いありません。
川口の地下で、今まさにできる川口の闇を、川口の鋳鉄の箱で切り取る。
それをアトリアの床の上に、置いてみたい。
そう、第3の歯車は、「床」。
これがどうして動機になるのか、不思議に思われる方もいるかもしれません。
しかしアトリアの床は、一見は普通のフローリングですが、実はちょっと変わった経緯でできています。
つまり、「並木元町雨水調整池」と同じ場所から引き抜いた、同じ闇の場所から引き抜いた素材、ということ。
アトリアが開館して10年。床の上では色々なことがありました。
たくさんのアートワークが並び、多くの人が行き来して、創作や鑑賞を楽しみ、思い思いの時間を過ごしてきました。
そして、本展において、その原点であった「地下の闇」が、《DARK BOX 2016》によって再び地上へ!
地下にあった時間の隔たりが一気に近づき地上で出会う瞬間。それを描き出すことが、本展の物語が走り出すきっかけになりました。
いくつもの歯車があわさって、この展覧会という現場が動き出したのです。
鉄の箱は既に準備万端で封印のときを待っています。
本展のオープニングイベント「闇を封印する」ワークショップによって、作品として完成します!
《DARK BOX 2016 -地下からの闇》は、10月8日(土)に地下へ潜り、ワークショップを経た後、12日(水)より公開!
ここでしか出会えない「時間の交差」を、どうぞご覧ください。
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川口市立アートギャラリー・アトリア
開館10周年記念事業第2弾/平成28年秋の企画展
〈河口龍夫―時間の位置〉
時間は、現場に掘り起こされる。
2016年10月8日(土)~11月26日(土)
10:00~18:00(土曜日のみ20:00まで開館)
休館日:月曜日(ただし10月10日(祝)は開館、翌11日(火)は休館)
※10月12日(水)、11月1日(火)に展示替え予定
観覧料:300円(高校生以下無料)
※開館10周年記念リピーター割:当館ロゴの入っているチケットやチラシ(本展のものを除く)を受付でご提示いただいた方は半額(他の割引制度と併用不可)
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10月3日(月)~7日(金)は展示入替のため臨時休館とさせていただきます。ご了承ください。