最終回となった今回のアートウォッチングは聴覚に障害のある方とない方が一緒に楽しむ回。聞こえない人も楽しめる美術鑑賞の環境づくりを行っている「美術と手話」の協力を得て実施しました。7名の参加者が集まり、聴覚障害者と手話通訳がナビゲートする2つのチームに分かれて展示作品を鑑賞していきました。
まず始めに、質問カードをを1人ずつ引選んで自己紹介。初めは少しぎこちなかった雰囲気が、好きな季節、色などを答えていくうちに打ち解け、柔らかい雰囲気になりました。では、活動のスタートです。
展示コーナーで、3人の作家の気になる作品を1つずつ選んで会話します。
本橋成一さんの写真では、
「これは綺麗な水か、汚い水なのか」
「日常の行いか、特別な儀式なのか」
と相反するような見方が出てきました。
田中みぎわさんの水墨画では
「海などの水面に月が映っている」
「木がしなっているようにも見える」
など、意見が広がっていきました。また、
「色は付いていないが、様々な見方が出るとそのように色が付いて見える」
という意見も出ました。
伴美里さんの絵画を鑑賞した参加者は、
「小さい時に虫を探した時の匂い、手触りを思い出す」
「転んだ時に土、草まみれになったことを思い出させる」
など、懐かしさを感じた方が多かったようです。
中にはその独特なフォルムを見て、
「マンホール」「鍋敷き」に見えるといった意見も出てきました。
鑑賞の最後は参加者全員で輪になり、チームごとに感想を話し合いました。
「他の人の見方によって、色などが変わって見えるのが不思議で楽しい」
「色々な見方が出たが、どれが正しい、間違いではなく、全てが凝縮されて1つの作品になっているのではないか」
など、見方が増え、世界が広がる喜びを得られて良かったといった感想がありました。
アートウォッチングの後に、本橋成一さんのスライド絵本『チェルノブイリいのちの大地』を上映しました。この作品は、実際にチェルノブイリ原発へ行き、その近くにあった村での人々との交流を描いています。
人々の笑顔や暖かさに和みながら、放射能への恐怖を抱き、撮影を続けた本橋さんの言葉に、参加者は真剣に耳を傾け、スクリーンに写る写真を鑑賞していました。
H26年春の企画展〈フィールド・リフレクション〉のアートウォッチングと上映会は、この日で最後となりました。たくさんのご応募、ご参加、ありがとうございました。