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鑑賞講座「楽器にみる美学」を開催しました
11月9日(土)、〈川口の匠vol.3 音をつくる〉関連として、やさしい鑑賞講座「楽器にみる美学」を開催しました。


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今回のゲストは、武蔵野音楽大学楽器博物館 主任学芸員の守重信郎さん。

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音色だけでなく、姿形も美しいバイオリン。しかしその起源や最初の製作者は明らかになっておらず、近年でも多くの学説が立てられているそうです。
例えば、くびれを持つ独特な胴体の形。これは元々洋梨形だった楽器を弓を使って演奏するようになった際、弓の邪魔にならないようにへこませたという意見がありました。しかし現在では、胴のくびれは弓の発明よりも前からすでに存在して、木材の力学上の問題でくびれが生まれたとする説が有力視されているとのこと。


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さらに今回、武蔵野音楽大学楽器博物館から様々な変形バイオリンを守重さんにお持ちいただきました!
鉄の板でできたものやステッキに内蔵されているもの、さらにはラッパの付いたものまで、どんな音がするのか想像もつかないようなバイオリンがズラリと並びました。

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こちらは「ハーディ・ガーディ」という手回しバイオリン。右手でハンドルを回し、左手で鍵盤を押さえて演奏します。

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こちらはラッパのついた「ホーン・バイオリン」。一定方向に音を強く出すためにつくられたもので、ラッパ部分から大きな音が出る代わりに、演奏者にはほとんど音が聞こえません。

驚くほど特殊な形をした変形バイオリン。一般的なものとは姿も音色も全く違い、バイオリンの奥深さを知ることができました。


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講座の後半には、出品者の賴德昌さんがバイオリン製作の一部(表板のf字孔のカットと、裏板の鉋がけ)を実演してくださいました。

f字孔はまず板に小さな穴を開け、そこに糸のこぎりを通して大まかに形を切り抜いた後、下書きに沿ってナイフで慎重に孔を整えます。このとき使用するナイフは、使いやすいように先端の形を変形させています。
「バイオリン製作は道具づくりから始まる」
と賴さん。工房にある道具類の多くは自作されているそうです。

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また裏板は豆鉋という真鍮製の小さな道具を使い、板の厚みを確認しながら削ります。板厚は部位によって微妙に異なるため、目視だけでなく測定器を使用しながら鉋掛けします。一番小さいものだと8mmの豆鉋を使用するそうです。


普段は工房の中で集中して行われる作業。
賴さんの手仕事を拝見できる貴重な機会となりました。
by atlia | 2013-11-12 11:51 | 鑑賞講座・実技講座